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ホンダジェット、国内販売開始 藤野社長「新しい市場作る」

 本田技研工業(7267)の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は6月6日、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の日本での受注を始めた。丸紅(8002)の子会社でビジネスジェットの販売や整備、チャータを手掛ける丸紅エアロスペースを、ディーラー「HondaJet Japan」に指定。2019年前半の納入開始を目指す。

ホンダジェットの国内販売で提携する(左から)ホンダ エアクラフト カンパニーの藤野道格社長、ホンダの八郷隆弘社長、丸紅の氏家俊明常務、丸紅エアロスペースの遠矢源太郎社長=18年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
新しい市場作る
日本を次のステージへ

新しい市場作る

ホンダジェットについて説明するホンダ エアクラフト カンパニーの藤野社長=18年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本で販売する機種は、5月27日に発表したアップグレード版「HondaJet Elite(ホンダジェット エリート)」のみ。エリートは、空力特性の見直しや重量軽減、燃料タンクを増やしたことで、航続距離を従来の1223海里(約2265キロ)から1437海里(約2661キロ)に17.5%伸ばした。

 また、客室内の静粛性を高め、ゴーアラウンド(着陸復行)時に自動操縦を保持するオプションを用意するなど、安全性を高めた。カタログ価格は、1機525万ドル(約5億7800万円)となる。

 エリートは、国内84空港に乗り入れることができ、羽田や成田、関空、那覇から国内全空港へノンストップで飛ぶことができる。日本から海外へ向かう場合、北京や上海、台北、ソウルなどにノンストップで飛べる。HACIの藤野道格社長は、ホンダジェットの航続距離について、「ビジネスジェットの需要が多いルートのトップ10のうち、半分をカバーしている」と説明した。

 HACIは、5月に国土交通省航空局(JCAB)へホンダジェットの型式証明を申請。日本での販売は、官公庁やチャーター会社などへはHACIが担当するが、企業や個人がプライベート機として使う場合は、丸紅エアロスペースがディーラーとして販売し、機体の整備は岡山航空(岡山市)が担う。

 藤野社長は、日本市場への参入する意義について、「既存のシェアを取ったり、置き換えるだけではなく、新しい市場を作ることが大きな目的だ」と語った。

 「日本もビジネスジェットに対する購買・使用意欲は、欧米並みだと思う」(藤野社長)と述べ、現在は60機程度しかない日本の市場規模を、今後5年で2倍程度に拡大していきたいという。

日本を次のステージへ

熊本空港上空でデモフライトを披露するホンダジェット=15年4月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ホンダジェットで日本のビジネスジェット市場を拡大していく上で、課題となるのが日本の航空行政だ。これまでは航空会社が旅客機を運航することを前提に進んできたため、ビジネスジェットはスロット(発着枠)のプライオリティーなどの面で、冷遇されてきたのが実情。ビジネスジェットを運航する場合、外国籍で導入するオーナーも多い。

 日本で販売するホンダジェットについて、機体の登録番号(レジストレーションナンバー)が「N」で始まる米国籍と、「JA」で始まる日本籍の比率は、「運航の利便性を考えると、ほとんどが日本籍になるだろう。そのためにも、JCABに申請した」(藤野社長)と語った。

 藤野社長は、ホンダジェットが日本で売れることにより、「いろいろなところで使われるようになると、目で見て理解できるように変わってくる。ホンダジェットを数機売って終わりではなく、日本を今までと違うレベルにしていきたい」と、ビジネスジェット全体の利便性向上につなげていく姿勢を示した。

 藤野社長によると、米国では1時間2500ドル程度で、ホンダジェットを乗り合いで使う事例もあり、日本にもこうした潜在需要があると見込んでいる。「ホンダジェットは小さい飛行機だが、1回経験していただくと、乗り心地の良さをわかっていただけると思う」(藤野社長)と自信を見せる。

 また、海外では、旅客機が運べない患者の緊急搬送に、ビジネスジェットが使われている。藤野社長は、「(緊急搬送キットを設置する)機体改修が必要になる場合があるが、医療関係は大きな需要のひとつだ」と、ホンダジェットの売り込み先として有望な分野だと述べた。

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