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JAL機の部品落下、熊本空港周辺で金属片98個

 日本航空(JAL/JL、9201)は5月25日、熊本空港周辺で24日に起きた熊本発羽田行きJL632便(ボーイング767-300型機、登録番号JA8980)のエンジントラブルについて、現在70基ある同型機のエンジンのうち、直前の検査から間隔が空いているエンジン46基について、5月31日までに内視鏡点検を実施することを明らかにした。

—記事の概要—
エルロンと水平尾翼に傷
分解検査で損傷部分特定へ
空港周辺に落下物

エルロンと水平尾翼に傷

熊本でエンジントラブルが起きたJALの767-300 JA8980=18年4月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALによると、エンジントラブルは24日午後3時55分ごろ、熊本空港の滑走路(RWY07)を離陸後、西9キロ、高度6000フィート(約1829メートル)の地点で発生。離陸後に上昇中にパイロットが振動を感じ、左右に1基ずつあるGE製エンジンCF6-80C2B4Fのうち、左側にある第1エンジンの排気温度が上昇していたため、熊本へ引き返した。

 エンジントラブルが生じた時点でのエンジンの排気温度は、左エンジンが約900度、右側の第2エンジンが約800度で、右エンジンが正常な状態の温度だという。パイロットは、左エンジンが通常より100度高かったことからアイドリング状態まで推力を絞り、エンジンが2基とも動いている状態で熊本へ着陸した。

 JL632便は、熊本へ午後4時17分に緊急着陸し、同20分に到着。乗客209人(うち幼児1人)と乗員8人(パイロット2人、客室乗務員6人)に、けがはなかった。国土交通省航空局(JCAB)は24日夜、「発動機(エンジン)の破損(破片が発動機のケースを貫通)」に準ずる事態として、航空事故につながりかねない「重大インシデント」に認定した。

 これを受け、国土交通省の運輸安全委員会(JTSB)は25日、航空事故調査官3人を現地に派遣。JTSBによると、左エンジンの落下部品による点状の軽微な損傷が、左側のエルロン(補助翼)と水平尾翼(水平安定板)にみられたという。

 JCABによると、左エンジンケース後方の胴体側に、長さ9センチほどさけてめくれ上がった部分が確認されたという。JALによると、エンジンケースの損傷部分は低圧タービン外側にあたる部分だという。

分解検査で損傷部分特定へ

 機体は現在、JTSBが調査を進めているため、JALでは外観の検査しか実施していないが、5段で構成される低圧タービンのタービンブレードの一部に、損傷が見受けられたという。JTSBでは、低圧タービンの何段目が損傷したかは、分解検査を今後実施し、特定していくとしている。

 JALによると、トラブルが起きたエンジンは、1993年1月に受領。これまでの飛行時間は約7万飛行時間、3万3000サイクルで、低圧タービン部を完全に分解して検査したのは2015年11月、オーバーホールは2017年11月で、この時も目視点検し、異常はみられなかったという。今年3月には、高圧タービンなどの内視鏡検査を実施しているが、問題点の報告はなかった。

 JALは767のほか、2011年3月1日に退役した、ジャンボの愛称で親しまれた747-400のエンジンもCF6を採用していたが、今回のように部品が落下するトラブルは、これまでになかったという。JALは現在、35機の767を運航しており、70基のCF6を使用。優先度が高いエンジン46基の内視鏡検査を5月31日までに実施し、残りも同様の検査を行う。

 JTSBはあす26日も調査を実施。エンジンの分解検査をどこで実施するかなどは、今後検討する。

空港周辺に落下物

金属片の発見地点(5月25日14時現在、国交省の資料からAviation Wire作成)

 24日に起きたJL632便の重大インシデントに起因するとみられる落下物が、熊本空港周辺で見つかっている。JCABによると、25日午後2時の時点で、熊本空港の南西7キロを中心とする23地点で、金属片が発見されたが、現時点ではすべてがJL632便のものかは特定できていないという。

 航空機部品とみられる金属片は、98個が回収された。もっとも大きなものは、エンジン部品とみられる大きさ80ミリのものだった。

 また、因果関係は判明していないものの、被害報告が5地点からあり、病院の窓ガラスや自動車のフロントガラスが割れ、工事中の建物に損傷があった。

 JALは25日、熊本市内で会見し、阿部孝博空港本部長が謝罪した。

関連リンク
日本航空 [1]
国土交通省 [2]
運輸安全委員会 [3]

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