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デルタ航空、羽田シフト鮮明に ビジネス需要に焦点

 「米国では羽田が知られていない」。日本人にとっては意外とも言える米国での羽田の知名度に踏み込んだのは、冬ダイヤ初日となる10月30日に羽田-ミネアポリス線を開設するデルタ航空(DAL/DL)の森本大・日本支社長だ。

 「米国は8割がネット予約。羽田の存在を知らせるところから始まった」と、米国では日本のように旅行会社の窓口で、新路線の特徴を利用者に直接説明するのが難しい。まずは羽田の利便性の高さをアピールすることから始めたという。

これまでデルタのアジア拠点だった成田空港。首都圏需要は羽田へシフトする=15年8月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
乗り継ぎ拠点ミネアポリス
国との関係づくり強化
止まらぬ羽田シフト

乗り継ぎ拠点ミネアポリス

羽田に到着するデルタ航空のA330=12年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 冬ダイヤから始まる羽田の昼間時間帯への米国路線乗り入れの発着枠は、日米両国の航空会社に昼間5便(往復)ずつ、深夜早朝1枠ずつの計6枠配分された。

 羽田に乗り入れる米系航空会社4社には、デルタに2枠、アメリカン航空(AAL/AA)とユナイテッド航空(UAL/UA)に1枠ずつ、ハワイアン航空(HAL/HA)に昼と深夜の1枠ずつの配分となった。日本にアライアンスのパートナー航空会社がない2社に2枠が配分された形だ。

 デルタはその2枠を、深夜便から移行するロサンゼルスと新設となるミネアポリスに割り振った。しかし、冒頭のように羽田の知名度が米国で低いのと同様、日本ではミネアポリスの利便性は浸透していない。

 「ミネアポリスの知名度は高くないが、(合併した)ノースウエスト航空の本社があったことから、デルタではハブ空港としての位置づけが高い。他社がさほど乗り入れていないのでデルタのシェアが高く、サイズもコンパクトなので乗り継ぎしやすい」(森本支社長)と、乗り継ぎの良さをアピールする。

ミネアポリスでの乗り継ぎの良さを説明するデルタ航空の森本支社長=16年10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 デルタはミネソタ州の州都であるミネアポリスを、日本から直行便が飛んでいない中規模都市への乗り継ぎ拠点と位置づけ、日本語での案内などサービス向上を図った。ボルティモアやオーランド、コロンバス、トロント、モントリオールなどへの乗り継ぎ需要が見込まれるという。また、PGAによるゴルフレッスンの施設など、ビジネスマンが乗り継ぎ時間に楽しめる施設の整備も進んでいる。

 日本からの乗り継ぎを意識し、「米国内線のネットワークを調整した。1時間から1時間半くらいの乗り継ぎが良いと思うが、パッケージツアーでは2時間くらい掛かるので、時間を掛けて細かく調整した」(森本支社長)と、日本市場を強く意識していることをアピールする。

 もう一方のロサンゼルス線についても、「ロサンゼルスは絶対に死守する」として、日系で唯一羽田からロサンゼルスへ飛ばす全日本空輸(ANA/NH)が深夜便であるのに対し、昼間はデルタとアメリカン航空の米系2社となることから、積極的な法人営業を仕掛けていく。

 「ロサンゼルス線は、ロサンゼルスを最終目的地とする需要がほとんど。ミネアポリス線は半分以上が乗り継ぎになるので、旅行会社へ営業するスタッフを増やすだけではなく、ミネアポリス乗り換えが便利と思われる企業への営業を、半年くらい集中的にやる」と話す。

 具体的には、羽田から30分以内にオフィスを構える大手で、米国出張が多い企業だという。

国との関係づくり強化

 羽田と成田の距離感について、「品川区や大田区、神奈川県では、成田と羽田の距離感がある」と、羽田に近い都心部では、特に法人需要は羽田路線が強いと指摘する。一方、グアムなど観光路線については、「距離の利便性は打ち消される」として、今後も成田発着とする考えを示した。

 今回の発着枠配分で、羽田からは西海岸のロサンゼルス、米国中北部のミネアポリスへ就航するが、「2つとは言わず、3ついただければ」と話す森本支社長。東海岸であれば「圧倒的にニューヨーク」としながらも、日米間の需要を考えるとアトランタなど、デルタの乗り継ぎが便利な空港を優先する可能性も否定しなかった。

 「他社は日常的に国土交通省とやり取りしているが、これまでのデルタはゼロに等しい。単に要求するだけではなく、反省して日常的にコミュニケーションを取っていきたい」(森本支社長)と、国との関係づくりにも力を入れていくという。

止まらぬ羽田シフト

デルタ航空がA350に導入するスライド式ドアで個室空間を設ける新ビジネスクラス(デルタ航空提供)

 一方で10月に入り、デルタは成田-ニューヨーク線、成田-バンコク線、国際線乗継専用の成田-関西線の3路線を運休した。3路線の運休に伴い、成田発着路線が17路線から14路線に減少したことで、デルタの「ジャパンパッシング(日本通過)」を懸念する声が聞かれる。

 将来の見通しについて、「成田の北米路線は需給バランスが取れるくらいになるだろう。基本的には成田から羽田へ移し、成田を減らさざるを得ない。アトランタ-成田線が残れば、アジアとつなげられる」と、今後も羽田シフトが止まらない可能性が高いという。

 デルタは2017年6月からアトランタ-ソウル(仁川)線を新設し、同じく航空連合「スカイチーム」に加盟する大韓航空(KAL/KE)とのコードシェア(共同運航)を強化する。一見すると、太平洋路線の拠点を成田から仁川国際空港に移すように見えるが、必ずしもそうとは言い切れない。スカイチームは、中国東方航空(CES/MU)、中国南方航空(CSN/CZ)、厦門(アモイ)航空(CXA/MF)と、加盟20社のうち3社が中国勢だ。発着枠の規制が厳しいながらも、上海重視とみるほうが自然だろう。

 デルタが太平洋路線と分類するうち、売上シェアを見ると「中国と日本が半々」だという。成田路線の減少により、日本のシェアが下がるかについて、森本支社長は「成田は北米と日本、アジアと、日本が売れる座席は3分の1だった。これが羽田はアジア接続がない分、北米と日本が半分ずつになり、一気に販売できる席数が50席増える。ビジネス需要が見込めることから単価は上がり、ほとんど変わらないだろう」と、追い風になるとの見方を示す。

 一方、「中国の成長度合いはかつてほどではないが、中間層の成長は止まらないだろう。結果として中国の比率が増え、日本が下がる」と指摘する。そして、アジア全体では、直行便が増えるとの考えだ。

 2017年に受領を開始するエアバスA350-900型機は、個室タイプの新ビジネスクラスが特徴で、長距離路線を飛ぶボーイング747-400型機や、一部の777を置き換える。

 「距離を飛ばせるので、アジアをかなり意識して25機発注している。日本配分は最初からだ」(森本支社長)と、日本路線への早期投入だけではなく、アジアへの直行便が増えていく可能性を示す。

 ジャパンパッシングを指摘されながらも、羽田シフトにより日本市場を強化するデルタ。日本にパートナー航空会社がないながらも、競争力の高いA350導入やエコノミークラスでもスリッパを用意するなど、日本で新たな顧客獲得を目指す。

運航スケジュール
ロサンゼルス-羽田線
DL007 ロサンゼルス(11:00)→羽田(翌日16:05)
DL006 羽田(17:25)→ロサンゼルス(10:20)
*羽田行きDL006便は10月29日、ロサンゼルス行きDL007便は翌30日に運航開始

ミネアポリス-羽田線
DL121 ミネアポリス(11:31)→羽田(翌日14:20)
DL120 羽田(17:35)→ミネアポリス(13:32)
*羽田行きDL121便は10月29日、ミネアポリス行きDL120便は翌30日に運航開始

関連リンク
デルタ航空 [1]

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