成田空港、飛行機に穴開ける新型消防車　米国製、国内初導入

　成田国際空港会社（NAA）は4月26日、放水銃を自在に操れる最新鋭の化学消防車を報道関係者に公開した。国内の空港では初導入するタイプの消防車で、6月1日から運用を始める。

　導入される化学消防車は米オシュコシュ社製の「ストライカー 6 X 6」をベースにした車両。国内の空港に配備されている消防車としては、初めて高位置対応伸展型放水銃「HRET（エイチレット）」を装備した化学消防車で、火災が発生した航空機に対して、気体の内部や胴体下部など消火したい場所に対し、より正確に狙いを定めて放水出来る。

機体に穴開け消火

　HRETを装備した空港化学消防車は、放水銃を運転室前方や高い位置、低い位置に伸展できる。モニターカメラを備えた放水銃は、運転席からジョイスティックを使って操作する。

　高さを自在に変えられるだけではなく、機体を貫通させて消火する「穿孔（せんこう）ノズル」を使うことで、消防隊員を機内に突入させなくても、航空機で起きた火災の鎮圧が容易になる。

　車両の大きさは、全長12.36メートル、全幅3.10メートル、全高3.80メートル。消火に必要な水を1万500リットル、泡消火剤880リットルを積め、補助消火剤として粉末消火剤を220キログラム積載できる。放水銃を備える主タレットの最大地上高は15メートル、最大作業半径は10.5メートルで、穿孔ノズルの最大到達距離は8.5メートルとなっている。

　最高速度は時速110キロ、時速80キロに達するまでの加速性能は35秒。運転室には3人乗れるが、運転も含めて1人でも操作できる。実際の消火活動は2人体制であたり、車内外に分かれて活動する。

炎をピンポイントで消火

　26日は成田空港A滑走路脇にある消防西分遣所で、デモンストレーションが行われた。放水銃を装備するブームは三段階で伸び、地上から高さ15メートルの「ハイアタックポジション」で放水した。この位置では尾翼エンジンの火災など、高いところへ放水が必要な際に風の影響を受けにくく、消火したい場所に狙いを絞って放水できる。

　一方、翼の下や胴体下部、漏れた燃料などを消火する場合は、地面に近い「ローアタックポジション」にセット。火元や燃料に直接消火剤をまけることから、消防隊員が近づかなくても、安全に消火活動にあたれる。

　また、緑色のネットを航空機の胴体に見立て、穿孔ノズルを使ったデモンストレーションも実施。ネットにノズルを貫通させて放水を披露した。NAAによると、機体を貫通させる最適な位置は、旅客機は窓枠の上部25センチから30センチ、貨物機は時計の2時、4時、8時、10時方向になるという。

　FAA（米国連邦航空局）では、HRET型空港化学消防車の運用や訓練について、基準を定めている。NAAの社員12人も消火戦術や技術を習得するため、ダラス・フォートワース国際空港消防研究センターで研修を受けて帰国した。

　HRETの操作は高い技術と操作の習熟訓練が必要であることから、NAAでも専属担当者を認定するため、座学や実技など20時間の教育訓練を受講し、試験に合格した人だけが扱える。

　NAAでは23台の消防車を運用しており、このうち6台が化学消防車。今回、HRET型空港化学消防車を2台導入することで、既存の化学消防車2台を置き換える。

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