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「あっという間に行っちゃった」 写真特集・天草エアみぞか号、初代から2代目へ(2)

 「速いねー。あっという間に行っちゃった」。2月20日朝、あいにくの雨の中、天草エアライン(AHX/MZ)の2代目「みぞか号」(ATR42-600型機、登録番号JA01AM)が天草空港を離陸すると、初便のフライトを見守った人からは、2代目の加速の良さや上昇の速さに驚く声があがった。

天草を離陸する2代目みぞか号初便の福岡行き101便。あっという間に上昇していった=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2000年3月から16年間に渡り、天草エアラインが唯一運航する飛行機として多くの乗客を運んできた、わずか39席の小型ターボプロップ機、ボンバルディアQ100(DHC-8-103)型機(登録番号JA81AM)「みぞか号」が、2月19日をもって退役した。

 初代の最終便となった福岡発天草行き108便は、福岡空港の混雑や天候悪化により、定刻より12分遅れとなる午後7時52分、多くの人たちに出迎えられて到着した。ターミナル内は閉館時間が近づいても、パイロットや客室乗務員と記念撮影したり、思い出を語る人たちの熱気にあふれていた。

 そして、2代目が就航する20日も、早朝から式典の参加者や初便に乗る人たちで、ターミナルはあふれかえっていた。

—記事の概要—
ジェットに匹敵する機体
乗り降りは後ろから
新制服も着用開始
乗るとわかりやすい違い
写真60枚

写真特集・天草エアみぞか号、初代から2代目へ(全3回)
(1)「リクライニングもできず、心苦しかった」 [1](初代編)
(3) 新制服はちょっと派手?! [2](新制服編)

 特集第2回目は、2代目の就航初日を写真で振り返る。

ジェットに匹敵する機体

 2代目みぞか号は仏ATR社製のターボプロップ機で、19日に退役した初代みぞか号(ボンバルディアDHC-8-103型機、登録番号JA81AM)の後継となる新造機。天草エアラインが唯一運航する機体で、天草-福岡線を1日3往復、天草-熊本線と熊本-伊丹線を1日1往復ずつ運航する。

 「かわいい」を意味する天草の方言「みぞか」を名付けられた2代目は、初代と同様、左エンジンに「はるちゃん」、右には「かいくん」と名付けられた子供のイルカが描かれた。

 座席数は初代より9席多い48席。ワインレッドの客室内装はイタリアのデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロによる「ARMONIAデザイン」で、イタリア語で調和を意味する。機体下部には熊本県の人気キャラクター「くまモン」がサンタクロースに扮した「モンタクロース」を描いた。

 貨物室は機体の前後に1カ所ずつ設けられ、コックピットと客室の間と機体後部に設けられている。このため、後部ドアから乗り降りする。

 加速の良さを天草の人たちに見せつけたエンジンは、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ製PW127M。コックピットはエアバスA380型機の技術を取り入れたグラスコックピットで、最新の航法機器を装備する。“プロペラ機”というイメージとは裏腹に、ジェット機と大差ない機体性能や、機内の静粛性が売りだ。

2席−2席の4席配列となる天草エアラインのATR42「みぞか号」の機内=15年9月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

乗り降りは後ろから

 2代目は2015年8月21日に熊本空港へ到着。その後は熊本で乗員訓練が行われ、天草には2016年1月7日に到着した。

 「今度は私たちの席は後ろなの。だから顔がよく見えないねー」。天草に初めて2代目が姿を現わした1月7日、客室乗務員の井上紗綾さんは、機体を見にターミナルを訪れた地元のお年寄りと話し込んでいた。

 後部ドアから乗り降りする2代目は、客室乗務員の席が後部ドア付近になる。初代は客室乗務員と乗客が正対する配置だったが、2代目は機体後方から客室の様子を見渡すようになるのだ。

 新しい機体は、これまで慣れ親しんだ機内の雰囲気が変わる。一方で、手荷物収納棚が大きくなったり、LED照明を採用するなど明るい空間になった。

 初代と比べて、離陸する姿や機内が洗練された印象の2代目だが、井上さんら客室乗務員の気さくなもてなしは、これからも変わることはないだろう。

雨の中2代目みぞか号に向かう初便のパイロットと客室乗務員。乗員も乗客も後部ドアから乗降する=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

新制服も着用開始

 2代目の就航式典の準備は、19日夜に福岡行き最終の107便が出発直後に行われた。ターミナル内のイスの向きを変えたり、カーペットやバックパネルなどを社員総出で準備した。

 ターミナルには午前7時前にもかかわらず多くの人が集まり、客室部の太田昌美部長と、記者(私)が前日搭乗した便に乗務していた村上茉莉子さんが、受付に立っていた。村上さんら客室乗務員をはじめ女性社員が着用する制服も、みぞか号と同色をあしらった新デザインのものが導入された。新制服は、女性社員が中心となってコンセプトをまとめたもの。存在を知らなかった私は、ちょっと驚いたというのが正直な感想だ。

 式典を終え、雨の中搭乗が始まった。初便の福岡行きMZ101便は午前7時59分(定刻午前8時)に天草を出発。後部ドアから搭乗した乗客は、客室乗務員の西島皓子さんや機体を写真に収めていた。

 天草エアラインは機材が1機のみのため、みぞか号更新に伴い、2015年8月から2代目就航前日の19日まで減便。天草-福岡線のみ運航を続けてきた。

 2代目就航により、この日から本来の運航スケジュールである1日10便(5往復)を運航出来るようになり、天草-福岡線を1日3往復、天草-熊本線と熊本-伊丹線を1日1往復ずつ飛ぶようになった。

新制服を着用してターミナル入口の受付に立つ客室乗務員の太田さん(右)と村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

乗るとわかりやすい違い

 初代と2代目の取材を終えた私は、天草を午後3時30分に出発する福岡行き105便に搭乗し、東京へ向かった。当日は天候悪化により欠航の恐れもあったが、30分ほどの遅れで出発することになった。

 手荷物検査を終えて駐機場へ向かうところでは、太田さんが搭乗証明書やポストカード、おまんじゅうが入った記念品を乗客に手渡していた。初便の乗客には、ATR社のストラップやタグ、くまモンのキーホルダーもプレゼントされたが、こちらは数量限定のものだった。

 機内に入ると、初代と比べて広くなったと実感した。座席配置が1列2席+2席なので、エアバスのA320やボーイングの737といった1列3席+3席で180席クラスの機体よりは横幅が狭いが、今までよりゆとりがある。これまで座席下に収納していたカメラバッグも、手荷物収納棚にしまうことができた。

 機内の静粛性が向上しており、離陸の速さと相まって、ターボプロップ機の印象を覆すものだった。空港から離陸の様子を撮影した時よりも、機内で実際に乗っている時のほうが違いを感じた。以前、ATRの関係者から「乗ると違いがよくわかるんですよ。ぜひ乗ってくださいね! ね!」と力説されたが、確かに乗って良さがわかる機体だ。

 105便の所要時間はわずか35分。客室乗務員の村上さんは、観光パンフレットを配りながら、乗客から手渡された「フライトログブック」を記入したりしていた。

 悪天候や空港の混雑で、福岡空港には午後4時45分に到着。到着した駐機場はターミナルからやや離れていたため、バスでの移動となった。雨の中バスに乗り込むと、村上さんはバスが見えなくなるまで、笑顔で手を降り続けていた。

(最終回・新制服編につづく [2]

*写真は60枚。

チェックインカウンターに立つ地上旅客係員も新制服を着用=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

午前7時前だが2代目みぞか号の就航初日とあってターミナルには多くの人の姿があった=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

新制服を着用してターミナル入口の受付に立つ客室乗務員の村上さん(左)と太田さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

雨の中2代目みぞか号に乗り込む初便のパイロットと客室乗務員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

雨の中飛行前点検するパイロット=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

雨の中飛行前点検するパイロット=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号に荷物を積み込む天草エアラインの社員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号初便の福岡行きに搭乗する乗客=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号初便の福岡行きに搭乗する乗客=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号の貨物ドアを閉める天草エアラインの社員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号初便の乗客の撮影に応じる客室乗務員の西島さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号の貨物ドアを閉める天草エアラインの社員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

貨物ドアの状態を確認する天草エアラインの社員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

出発準備する天草エアラインの社員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機内アナウンスする客室乗務員の西島さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

乗客が乗り終えて地上スタッフとドアを閉める客室乗務員の西島さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

乗客が乗り終えて地上スタッフとドアを閉める客室乗務員の西島さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

後部ドアを閉める天草エアラインの社員=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

出発を待つ2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

雨の中エンジンをスタートさせる2代目みぞか号=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

エンジンがスタートし出発を待つ2代目みぞか号=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

エンジンがスタートし車止めを外される2代目みぞか号=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

社員に見送られて天草を出発する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を出発する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を出発する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を出発する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を出発する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を出発する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸する2代目みぞか号初便の福岡行き101便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸し福岡へ向かう2代目みぞか号初便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸し福岡へ向かう2代目みぞか号初便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草を離陸し福岡へ向かう2代目みぞか号初便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号初便の福岡行き101便の乗客に配られた記念品=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

熊本線再開初便となった天草を出発する熊本行き201便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

熊本線再開初便となった天草を出発する熊本行き201便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

熊本から到着する202便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

熊本から到着した202便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

熊本から到着した202便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

熊本から到着した202便=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草に到着し荷物を運ぶ客室乗務員の井上さん(左)と西島さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡行き105便に搭乗する乗客=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

天草空港に駐機中の初代みぞか号=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

後部ドアから見た2代目みぞか号=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

出発前に手荷物収納棚を整理する客室乗務員の村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号から見た天草空港=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

安全のしおりが差し込まれた2代目みぞか号のシート=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2代目みぞか号の安全のしおり=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機内で天草の観光パンフレットを配る客室乗務員の村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機内で天草の観光パンフレットを配る客室乗務員の村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港のグランドハンドリングスタッフに降機終了の合図を送る客室乗務員の村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港に到着しバスに乗った乗客に手を振る客室乗務員の村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機内からバスに乗った乗客に手を振る客室乗務員の村上さん=16年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
天草エアライン [3]
天草空港 [4]

写真特集・天草エアみぞか号、初代から2代目へ(全3回)
(1)「リクライニングもできず、心苦しかった」 [1](16年2月27日、初代編)
(3) 新制服はちょっと派手?! [2](16年3月15日、新制服編)

初代みぞか号退役
天草エアライン、たった1機のみぞか号退役 16年で地球310周分飛ぶ [5](16年2月19日)

2代目みぞか号就航
天草エアライン、2代目みぞか号就航 新制服も導入 [6](16年2月20日)

2代目みぞか号が天草到着
天草エアライン、新造機ATR42が天草到着 放水アーチで歓迎 [7](16年1月7日)

写真特集・天草エア2代目みぞか号地元入り
・前編 翼振って天草到着 [8](16年1月11日)
・後編 CAもモップ手に機体清掃 [9](16年1月13日)

写真特集・天草エアラインATR42 2代目「みぞか号」
・機体編 親子イルカ塗装を踏襲 [10](15年10月4日)
・機内編 客室前方は対面シート [11](15年10月4日)

2代目みぞか号が熊本到着
天草エアライン、ATR42「Newみぞか号」公開 国内初導入 [12](15年9月29日)
天草エアライン、日本初のATR機が熊本到着 ファンサービスも [13](15年8月21日)