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ANA国内線Wi-Fiサービス、一足先に使ってみた

 全日本空輸(ANA/NH)が1月25日からスタートさせた、国内線でWi-Fi機器を使った機内インターネット接続有料サービス「ANA Wi-Fiサービス」。ネット接続だけではなく、新たに乗客がスマートフォンなどを使い、上空でテレビ番組が見られる無料サービス「ANA SKY LIVE TV」を提供するのが特色だ。

 新サービスは、乗客が手持ちのスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなど無線LAN対応端末で利用できる。「Safari」や「Chrome」などのウェブブラウザーでは、著作権保護技術「DRM」を用いた一部コンテンツを視聴できないことから、iPhoneやiPad、アンドロイド端末ではANAの公式モバイルアプリの利用を推奨している。

 料金は最初の接続から40分間使える「40分プラン」が550円、利用便の出発から到着まで利用できる「フルフライトプラン」が1050円。支払いはクレジットカードのみ。2月末までは無料で利用できる。

 近年国内外の航空会社で導入が本格化している、機内ネット接続サービス。ANAが国内線で展開するサービスは、どのような使い心地だろうか。実際に羽田-札幌間でインターネット接続とテレビ番組の視聴を試してみた。

ANA Wi-Fiサービスに接続したMacbook ProとiPhone=16年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
システムはパナソニック
2年間で国内線100機に
支払はクレジットカードのみ
下りは3-4Mbps
無料で楽しめるテレビ

システムはパナソニック

777-300に取り付けられたANA Wi-Fiサービス用アンテナ=16年1月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 まず、国内での機内ネット接続サービスの現状を見てみよう。国内では日本航空(JAL/JL、9201)が「JAL SKY Wi-Fi」と名付けたサービスを、2012年7月15日から国際線で、2014年7月23日から国内線で開始した。

 一方、ANAは2014年3月1日から、エアバスなどが出資するオンエア社の「インターネットオンエア」を用いたサービス「ANA WiFi」を国際線で開始。2015年5月5日からは、ボーイング787型機で唯一採用された米パナソニックアビオニクス製の航空機内インターネット接続サービス「eXConnect」を使ったサービス「ANA WiFi 2」を、787-9の国際線仕様初号機(登録番号JA836A)の就航と同時にスタートさせている。

 今回始めた国内線用サービスも、パナソニックのeXConnectを採用している。

 国内線は飛行時間が長くてもおおむね3時間程度と、10時間前後の路線もある国際線とは機内の過ごし方が異なる。しかし、一度機内でもネットに接続できる便利さを知ってしまうと、急ぎでメールの返信をしたい時などに助かるもの。また、出発前に調べられなかった旅先の情報を、到着前に検索することも可能だ。

2年間で国内線100機に

 1月25日から始まった国内線用のネット接続サービスを利用できる対象機種は、ボーイング777、787、767、737、エアバスA320の全クラス。ボンバルディアQ400ではインターネット接続やテレビ番組の視聴は出来ず、ビデオ番組とオーディオ番組、電子書籍サービスのみ利用できる。一方、ボーイング737-500と737-700は対象外となる。

ANA Wi-Fiサービスに対応した777-300のドア付近のロゴ。サービス開始前に搭乗したため×印が付いていた=16年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 当初はボーイング777-300型機のポケモンジェット「ピース★ジェット」(登録番号JA754A)1機のみ。2015年11月下旬から羽田空港の格納庫で改修した最初の機体で、同機が就航している羽田-札幌、福岡、那覇線を中心にサービスを始める。

 今後は3月上旬に737-800、同下旬に777-300を各1機ずつ投入。2018年3月末までの約2年間で、国内線用機材約100機で利用できるよう計画を進めていく。

 システムは前述のeXConnectと、航空機内衛星テレビサービス「eXTV」 を採用。機内の通信規格はIEEE 802.11a/b/g/nで2.4GHz帯と5GHz帯両対応している。機体と衛星との通信速度は最大30Mbps(メガビット毎秒)で、「Kuバンド」の衛星回線を使うものだ。

 777-300の場合、無線LANの機内アクセスポイント(アンテナ)は5カ所。限られた帯域を利用者で共有するので、サービスを使う人が増えると、実行速度は低下する。

 では、実際の使い心地はどうだろうか。ネット接続から見ていこう。

支払はクレジットカードのみ

 今回記者(私)は、スマートフォンやタブレット用のANA公式アプリがインストールされたiPhoneとiPadのほか、ノートパソコンの動作テスト用にMacBook Proを、羽田-札幌間を商業運航する777-300に持ち込んだ。なお、iPhoneやiPadのアプリは開発版を試用したので、正式版とは表示などが異なる場合がある。

 まず、iPadから試用してみた。全体的な印象として、タブレット端末用の画面レイアウトを見ると、どちらかと言えば横向きで利用したほうが、画面を有効活用しているように感じた。

iPadの横位置(左)と縦位置画面(iPadのスクリーンショット)

ANA Wi-Fi Service ポータルサイトの横位置(画像左)と縦位置画面(iPadのスクリーンショット)

 ANAのアプリを立ち上げ、画面左側のメニューを出すと下側に「国内線 機内Wi-Fi」という項目がある。これをタップすると、インターネット接続やテレビ番組視聴などのボタンが並ぶ「ANA Wi-Fi Service ポータルサイト」が表示される。

 ここでインターネット接続を利用する場合は画面左側の「インターネット接続はこちら」を、テレビ番組やビデオ、電子書籍などを見る場合は「エンターテインメント」ボタンを押す。

 インターネット接続する場合は、次の画面で接続プランや個人情報、クレジットカード情報などを入力していく。すでに国際線で「ANA WiFi 2」のアカウントを持って入れば、そのまま利用できる。料金は「40分プラン」が550円、「フルフライトプラン」が1050円。支払いはクレジットカードのみだ。

iPhone用アプリを使用する際はホーム画面(画像左)で左側にメニューを表示し、「その他」の「国内線 機内Wi-Fi」をタップする(中央)と「ANA Wi-Fi Service ポータルサイト」(右)が表示される(iPhoneのスクリーンショット)

下りは3-4Mbps

 インターネットに接続すると、ウェブサイトの閲覧やメールの送受信は問題なく出来るが、地上と比べるとワンテンポ待つような感覚だ。光回線やLTE回線に慣れていると遅いと感じるが、他の機内インターネット接続サービスと比べて大差はなかった。

 参考までに、機内に持ち込んだiPhone 5s(iOS 9.2)で、回線速度計測アプリ「SPEEDTEST」を用いてダウンリンク(下り)とアップリンク(上り)の回線速度を3回計測してみた。

iPhone 5Sで通信速度を計測。3回計測して下りは3-4Mbps、上りは0.1-0.2Mbpsだった(iPhoneのスクリーンショット)

1回目:PING 758ms、下り 3.13Mbps、上り 0.23Mbps
2回目:PING 827ms、下り 3.09Mbps、上り 0.15Mbps
3回目:PING 803ms、下り 4.09Mbps、上り 0.11Mbps

 通信先のサーバーが応答するまでが平均800ms、下りが約3Mbps、上りが0.15Mbpsといったところだ。下りについてはADSL回線くらいの速さで、ウェブサイト閲覧などの用途であれば問題ない速度だと言える。

 メール送信についても、地上よりは送信に時間が掛かる。機内に持ち込んだノートパソコンからメールを送ると、最初のサーバーに到着するまでに11秒かかっていた。地上では送信直後に最初のサーバーまで届くことから、衛星回線という環境の違いが現れている。

 添付ファイルの送信は試していないが、手短なテキストメールのみであれば実用上は問題ないと感じた。私は過去に機内からメールを送信したことがあるが、トラブルに遭ったことはない。

 しかし、衛星回線は天候により通信状況が左右される。さらに、機内で多くの人がインターネット接続すれば、通信速度は低下する。こうした特性をあらかじめ理解して使えば、問題はないだろう。

機内でiPadに横位置と縦位置で表示させたAviation Wireの記事(iPadのスクリーンショット)

無料で楽しめるテレビ

 今回のシステムの売りは、乗客のスマートフォンなどで、リアルタイムでテレビ番組を視聴できる「ANA SKY LIVE TVサービス」だ。国内線では初導入となり、衛星多チャンネル放送サービス「スカパー!プレミアムサービス」で放送中のニュースやスポーツ番組を無料で楽しめる。

 機内で放映するのは、日本テレビのニュース「日テレNEWS24」、プロ野球巨人戦を生中継する「日テレジータス」、サッカー専門チャンネル「スカサカ!」の3チャンネル。飛行ルートや気象状況により、通信が不安定になることや接続が中断される場合もある。

機内で視聴できる日本テレビのニュース「日テレNEWS24」。タッチすると全画面表示になる(iPadのスクリーンショット)

 また、バラエティーや子供向けなどのビデオ番組を10-15番組、音楽番組を20-25番組、ANAの機内誌や雑誌、マンガ、観光案内など20冊の電子書籍、ANAオリジナル商品を扱うショッピングサイトも用意する。

 巨人戦が選ばれた理由は、ファンが特定地域にとどまらず、全国的にいることからだという。ビール片手に機内で巨人戦を観戦といった風景が、ビジネスパーソンが多い路線で多く目に付くようになるかもしれない。

 ANAでは、機内ネット接続サービスを利用する際、スマートフォンやタブレット端末では、同社公式アプリの利用を乗客に呼びかけている。これはビデオプログラムの中で、アニメなど著作権保護技術「DRM」を用いた一部コンテンツを、標準状態のウェブブラウザーでは視聴できないためだ。

 私が視聴した時点では、画像が大きく乱れるなどはなかったが、飛行ルートや気象条件によっては、通信が不安定になる可能性もある。

 一方、電子書籍はビジネス誌や趣味誌などを用意。機内誌のほか、ANAウイングス(AKX/EH)の社員が作った子供向けの飛行機解説や航路図も載せている。

 電子書籍については、画面の大きさや操作性から、タブレット端末での閲覧が利用しやすかった。

ビデオ(左2つ)と電子書籍(右2つ)の画面(iPhoneのスクリーンショット)

ANAウイングスの社員が制作した「Q400日記」(Macbook Proのスクリーンショット)

 動作検証に使えた時間は約1時間だったが、ニュース番組の生放送を見られたり、機内でもメールを送受信出来ることは、移動時間を無駄なく過ごす上で便利だ。

 一方、飛行機に乗っている時くらいは、仕事に追われたくないという人も多いだろう。国内線機材の大半がネット接続できるようになる2年後は、どのような使われ方が増えているだろうか。

ANA Wi-Fiサービスでテレビ番組を視聴する際は、左から右のスクリーンショットのように画面が進んでいく(iPhoneのスクリーンショット)

iPhoneで表示した「日テレNEWS24」は横位置と縦位置でこのように表示が異なる(iPhoneのスクリーンショット)

ANA Wi-Fiサービスに接続したMacbook ProとiPhone=16年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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