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子供の原体験奪う展望デッキ閉鎖 MRJ初飛行、愛知県に航空語る資格なし

 11月11日午前9時35分、三菱航空機のジェット旅客機MRJが初飛行に成功した。半民半官の日本航空機製造によるYS-11型機以来、半世紀ぶりの国産旅客機だ。奇しくも“11”が並ぶ日に、YS-11と同じ県営名古屋空港(小牧空港)の滑走路から飛び立った。

 しかし、これまで走行試験などの光景を一目見ようと、地元の人や航空ファンが詰めかけた、空港一の眺望を誇る展望デッキに人影はなかった。空港を管理する愛知県が、混乱と定期便客への迷惑防止を理由に閉鎖したためだ。

 そして、愛知県が空港付近での見学の代わりとして勧めたインターネットサイト「USTREAM(ユーストリーム)」による生中継は、アクセスが殺到してつながらなくなり、離陸の瞬間を視聴できなかった人もいた。

—記事の概要—
内外事例は生かされず
子供の原体験奪う大人たち
MRJ見学施設も「空港来るな」?

好天に恵まれた初飛行当日、県営名古屋空港の展望デッキに子供たちの姿はなかった=11月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

内外事例は生かされず

 記者は初飛行前日、「MRJ、11日午前初飛行へ 愛知県「空港来ないで」 [1]」という記事を出稿。弊紙に掲載したほかYahoo!ニュースなどに配信した。反響は大きく、たかだか飛行機の初飛行で騒ぐことではないという人もいれば、愛知県の対応に苦言を呈する人もいた。

県営名古屋空港を離陸し初飛行するMRJの飛行試験初号機=11月11日9時35分 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 記者自身は航空ファンではない。正確に言うと、興味も愛着もあるが、航空を趣味としてはたしなんでいない。2012年2月に弊紙Aviation Wireを創刊して以来、幾度となく「飛行機が好きなんですか?」と尋ねられたが違う。海外と比べて、政府が航空宇宙産業を成長分野と位置づけている割に、専門誌や業界紙はあるものの、経済紙で常に航空産業を追うメディアが自分が知る限り存在しなかったので創刊した。つまり仕事としてMRJを取材し続けてきたので、日本の航空史に残るイベント、という点を重視して記事を書いた。

 全国紙などには記者(私)よりも取材力が遙かに秀でた友人・知人がいる。しかし、スクープを取る敏腕記者も、わずか1、2年で異動してしまうことが多い。長期的にひとつの産業を追い続けることは、既存の新聞・通信社・テレビ・雑誌では難しいのが実情だ。

県営名古屋空港を離陸するMRJの飛行試験初号機=11月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 話を展望デッキ閉鎖に戻そう。記者が一番問題視したのは、MRJの初飛行は再三延期された。しかし、今回の展望デッキ閉鎖措置は、国内外で行われた大混雑する航空関連イベントの事例を基に立案されたものとは、とてもではないが言えない杜撰なものだ。

 例えば、昨年は英国でファンボロー航空ショー(偶数年開催)が、今年はフランスでパリ航空ショー(奇数年開催)が開かれた。どちらもいわゆる“田舎空港”での開催で、名古屋空港と同様に