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「飛行機設計は頭脳握るべき」ホンダジェット、藤野社長インタビュー

 ゴールデンウィーク期間中、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の日本ツアーが行われ、各地でデモフライトや機体を間近で見られるイベントが開かれ、多くの人が会場に詰めかけた。

 ホンダジェットは、本田技研工業(7267)の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が開発。主翼上に配された低騒音エンジンや、標準仕様で乗客4人が乗れるゆったりとした客室、乗員1人でも運航出来るコックピットなどが特徴。エンジンは米GEとの合弁会社GEホンダ製HF120を搭載する。

ホンダ エアクラフト カンパニーの藤野社長=4月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 コンセプトスケッチが生まれたのは1997年。その後、2003年にコンセプト実証機が初飛行に成功し、2006年にHACIが設立されて受注を開始した。量産初号機の初飛行には2014年に成功し、今年3月にはFAA(米国連邦航空局)の事前型式証明(PTC)を取得している。

 HACIの藤野道格社長は、機体開発の中でも難しいノーズの設計に、ハワイで見た高級ブランド・フェラガモのハイヒールから得たイメージを生かした。「先端形状で美しいものを見ていった時に目にとまり、応用できないかなと思った」という。性能の高さだけではなく、美しさもホンダジェットの特徴と言える。

 本田技研の創業者、本田宗一郎氏の夢を叶えたとも言われるホンダジェット。開発に携わってきた藤野社長に、長い年月をかけて開発を続けられた理由や、日本の航空業界が目指す道筋などを聞いた。

—記事の概要—
小さい機体で広さ実現
頭脳の部分を握る
今の仕事を全力でやる

小さい機体で広さ実現

──日本はビジネスジェットの敷居が高い。

藤野社長:今回試乗された方が口を揃えておっしゃるのは、静かで乗り心地が良く、居住性も良いということ。こういうものだったら、観光とかプライベートにも使えるという感想もあった。

 会場に来ていただいた方には、良さを体感していただけたのではないか。それが少しでも広がっていけばと思う。

──ホンダジェットはエンジンの位置など、従来の着想と大きく異なる点が多く見られる。改めて特徴的なデザインがなぜ出てきたのかを教えて欲しい。

藤野社長:燃費を出来るだけ向上させて、性能は落とさないという、相反する条件を満たす形態を考えた。燃費を良くするには、機体は出来る限り小さい方が良いが、そうすると居住性が犠牲になってしまう。

 ホンダジェットは外径を小さく出来て、機内を広く出来る設計を第一に考えた。胴体にエンジンを付けているビジネスジェットの構造を見ると、システム類などで胴体の容積を食われている。胴体からエンジンを取り外すことができれば、機体の外径を大きくすることなく機内を広く出来るのでは、と考えた。

 小型ビジネスジェットで翼上にエンジンを配置するものは今までなかったが、空力抵抗を下げるなど、技術的な課題を解決してこの形になった。

頭脳の部分を握る

──ホンダジェットの特徴として、エンジンHF120も会社はGEと合弁だが自社で手掛けている。内製にこだわる狙いは。

藤野社長:内製というよりは、自分たちの技術で設計して開発することだ。単に部品を買ってくるだけでは、