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ウォシュレット付く成田空港LCCターミナル「悪い方に合わせるのはどうか」

 12月22日に累計旅客数が9億人を突破した成田空港。これまで日本の空の玄関口と言えば成田だったが、2010年10月に羽田空港が再国際化後は、欧州方面の長距離路線などが羽田へ移転し、ビジネス客は都心に近い羽田便を選ぶ傾向が強くなっている。

 羽田は国内線と国際線の接続利便性が高いことから、これまでソウルの仁川空港を経由して乗り継いでいた地方からの乗継ぎ客が、羽田へ回帰する傾向もみられる。長距離国際線の中心が羽田へ移る中、成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は、LCC(低コスト航空会社)の誘致に力を入れ、次のステージを模索しているところだ。

 2015年4月8日には、第3旅客ターミナルとしてLCC専用ターミナルが開業する。座席数400席以上と国内空港最大級のフードコートや、24時間営業のコンビニエンスストア「ローソン」、成田空港最大の免税店などを揃え、26店舗が国内外の利用者を出迎える(関連記事 [1])。

すでに供用が開始されているLCCターミナル前の駐機場。ターミナル開業後はここから徒歩で移動する=14年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方で、このLCCターミナルは計画発表当初から、「建設費が高い」「ウォシュレットがない」など、乗り入れを予定する航空会社などから、何かと批判にさらされてきた。

 本紙でも11月に、世間とズレる成田空港「ウォシュレットないほうがLCCターミナルらしい」 [2]という、関係者の証言に基づく記事を掲載した。特に、ウォシュレットがないとされる点について、大きな反響があった。

─ 記事の概要 ─
既存ターミナルとの格差
ブリッジにひと工夫
暫定ターミナルは休憩スペースへ
LCCは成田に根付かない、では済まない

 本当にウォシュレットなしで、LCCターミナルは開業するのだろうか。また、なぜ建設費が高いと言われるのか。NAAのLCC専用ターミナルビル供用準備室の川瀬仁夫室長に、真相を聞いた。

既存ターミナルとの格差

 1978年5月20日に開港した成田空港には現在、大きく分けて2つの旅客ターミナルがある。全日本空輸(ANA/NH)や同社が加盟するスターアライアンスの加盟社が中心に乗り入れる第1ターミナルと、日本航空(JAL/JL、9201)や同社が加わっているワンワールド加盟社が主に乗り入れる第2ターミナルだ。

建設中の成田空港LCCターミナル。左側が本館、右側が国内線出発ゲートへ向かうブリッジ=14年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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第3ターミナルの位置(NAAの資料から)

 このうち、第1ターミナルは開港以来改修を重ね、2006年6月2日に現在の姿になった。一方、第2ターミナルは1992年12月6日にオープン。2011年度に4階店舗フロアの大幅リニューアルや、国内線対応工事を経て今に至る。

 成田に乗り入れる国内LCC 4社のうち、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)とバニラエア(VNL/JW)、春秋航空日本(SJO/IJ)は、LCC用暫定施設を使用している。2012年9月12日にJJP用施設が第2ターミナル南側に、翌10月23日にVNL(当時はエアアジア・ジャパン)やSJOが使用する施設が同ターミナル北側にオープンした。

 「第1ターミナルも第2も20年以上前の建物で、当時はウォシュレットが一般的ではありませんでした。両ターミナルのトイレに洗浄用として敷いたのは中水管で、便器のところまで上水道管を敷いていませんでした」と川瀬室長は説明する。中水とは、雨水や生活排水を処理して利用するもので、ウォシュレットには清潔な上水道が必要になる。

 川瀬室長は「ウォシュレットが第1にも第2にも完備されていないのに、LCCターミナルに付けるのか? という議論から始まったんです」と振り返る。

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各階の施設位置図(NAAの資料から)

 もう一つが、NAAとしての意識改革だった。成田空港を運営するのは、開港当初は特殊法人の新東京国際空港公団だった。これが2004年4月1日にNAAが発足し、公団から企業に生まれ変わった。

 LCCターミナルゆえ、計画がスタートした当時はコストを抑える方向で議論を進めた。「ウォシュレットなし」という判断の背景について、川瀬室長は「NAAも(公団体質から)変わるから」という意気込みで、最低限の設備に抑えようという思いもあったという。

 しかし、「それは変わりすぎだろ、ということになり、