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スカイマーク×エアアジアはあり得る? 羽田発着枠とA380解約問題

 「今のあの会社にカネを出すところはないよ」。今年4月初旬、数々の航空機案件を手掛けた大手商社OBから、こんな言葉が飛び出した。あの会社とは、エアバスA380の発注取り消しで注目を浴びるスカイマーク(SKY/BC、9204)だ。

今後の動向に注目が集まるスカイマーク=14年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 4月2日、SKYが6機発注したA380の初号機が初飛行に成功。完成していく機体とは裏腹に、同社が財務面でA380導入に耐えられるのか、リース会社など金融関係者からはすでに懐疑的な声が出始めていた。

 7月31日に発表した2014年4-6月期(第1四半期)決算では、継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記を記載。不採算路線の休止や金融機関からの借り入れを対応策として挙げている。

 SKYの西久保愼一社長は、同社が支払い不能に陥った際、大手航空会社の傘下入りをエアバスから求められたとしたが、エアバス側は強く否定。羽田空港の発着枠をめぐる争奪戦の可能性はあるのだろうか。

時価総額は170億円

 SKY争奪戦の前に、A380を巡る動きをまとめてみよう。

 SKYでは、6機すべてを購入機として導入を計画。2011年2月18日にA380を4機発注し、このときオプションだった2機も同年6月23日に正式発注へ切り替えた。エンジンは同年9月14日、英ロールス・ロイス社のトレント900を選定し、2017年までに全機を受領予定だった。

A380の契約解除について会見するスカイマークの西久保社長=7月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 同社初の国際線定期便となる成田-ニューヨーク線の就航は、今年12月下旬から2015年1月を予定していた。この計画が今年6月、ギャレー(厨房設備)やシートの不具合による納入遅れや仕様変更で、予定よりも2.5カ月から6カ月程度ずれ込むことが明らかとなり、最大で2015年夏ごろまで就航が先送りとなるとしていた。

 最初に発注した2011年2月18日の為替は1ドル83円台。102円台で推移する現在と比べると、2割程度円高だった。航空会社は燃油費を始めとしてドル建て決済が多く、機体もドル払いだ。発注から引き渡し開始までに進んだ円安は、SKYにとって大きな痛手となった。

 SKYでは機材を一度リース会社へ売却後、ただちにリース物件とする「セール&リースバック」や、ECA(輸出信用機関)によるファイナンスリースといった導入方法を検討していた。

 一方で、A380は総2階建ての超大型機ゆえ、どこの航空会社でも運航できる機体ではないという問題も抱える。1座席あたりの運航コストを抑えられる機体である反面、手放すのが難しい機体とも言える。

 また、A380を1機だけ導入するというのは、運航乗務員の訓練にかかる費用や設備、整備士の育成、予備部品の確保などから費用対効果が見込めず、中東の石油王でもない限り非現実的な選択だ。A380を導入している航空会社の多くは6機以上発注し、2路線以上運航していることから、6機で2路線の運航が最低ラインと言えるだろう。

 SKYでは6機の投資予定額について、総額1915億8500万円としている。今年3月末までに支払い済みの前払い金は265億円だが、エアバスが7月29日に契約解除を通告したことで、この前払い金がSKYに戻る可能性は低くなった。違約金も、7億ドル(約700億円)にのぼるとみられる。しかしこれは機体のみで、エンジンを発注したロールス・ロイスや、シートやギャレー(厨房設備)といった内装品メーカーへの違約金も生じるとみられる。

 事業の先行きに不透明感が増したことで、8月1日の終値は年初来安値を更新する187円と、前日比22円(10.5%)安となった。時価総額は170億7654万800円だ。

 西久保社長は7月29日、大手航空会社の傘下入りをエアバスから求められたと説明した。しかし、株をすべて売却したとしても、違約金の額にはほど遠い。

 もちろん、現預金など同社には他の資産もあるが、当然ながら全額を違約金に充てることはできない。金融機関から借り入れる場合も、これまで無借金経営を続けてきたことがアダとなる可能性もある。ある航空会社首脳は、「日ごろ借り入れがないということは、資金を用立てる銀行とのパイプがないこと」と指摘する。このため、スポンサーを必要とする状況になる可能性が高い。

 では、「大手航空会社」はSKYを買収するのだろうか。

羽田発着枠は36枠

 まず、日本航空(JAL/JL、9201)から見てみよう。同社は