全日本空輸(ANA/NH)は、間もなく導入する見通しのボーイング737-8(737 MAX 8)について、機体製造時にチェックする「領収検査」を米ワシントン州にあるボーイングのレントン工場で報道関係者に公開した。初号機(登録予定記号JA030A)は12月以降に受領する見通し。領収検査とは何か。誰がいつ、何をしているのか──。ANAの「トリトンブルー」塗装前の、“緑色”の機体を検査する様子を現地取材した。

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
—記事の概要—
・概ね10日間で1機“組み上がり”
・製造から引き渡しまで検査員がチェック
概ね10日間で1機“組み上がり”
737 MAXは200万点を超える部品で構成される。シアトル近郊のレントン工場とエバレット工場の2拠点で最終組立が進み、レントン工場は「西」「中央」「東」の3ラインで月産47機体制を目指している。エバレットでは今年7月に「北(ノース)ライン」1ラインを正式稼働させ、737 MAXの生産ラインを計4本に増やした。ノースラインは、将来のさらなる増産に対応する。

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機の領収検査を進める桐澤さん(左)=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
胴体は米カンザス州・ウィチタにある子会社の米スピリット・エアロシステムズで製造。シアトル近郊までの約2300キロを列車で輸送する。
各ラインでは製造工程を「Flow Day 1-10」と呼ぶ作業ポジションに分け、胴体への配線や油圧系統の取り付けから、主翼、尾翼、降着装置、客室設備、エンジンなどを順次組み付ける。基本は10日でFlow Day 1から10までを進むが、各ポジションでの作業や確認が終わるまで次へ移らないため、10日以上かかる場合もあるという。
Flow Day 1から3までは断熱材や油圧系統、電気配線の取り付けが進められる。レントン工場では、主翼や垂直尾翼などを取り付けるFlow Day 4以降は3ラインに分かれ、各ラインで製造が進む。エバレットのノースラインはFlow Day 1から10まで、1本のラインで製造する。

ウィチタから到着した737 MAXの胴体=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進む737 MAX=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進む737 MAX=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
製造から引き渡しまで検査員がチェック
領収検査は、ボーイングの品質保証体制下で製造された機体が、ANAの要求品質基準や発注した仕様を満たしているかを航空会社側で確認するもの。737 MAXは製造開始から引き渡しまで約3カ月かかり、担当者を交代しながらANAの検査員が継続して製造現場を確認する。

ボーイングのレントン工場で最終組立が進む737 MAX=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
検査は製造工程の指定したタイミングで対象部位を確認する「Call Inspection」、現場を巡回して製造状況を継続的に確認する「Surveillance Inspection」、不具合情報を基に実施する「Special Inspection」、地上・飛行試験による検査などで構成する。製造会社からの受領書類や基準適合書類なども確認し、現場検査と書類検査を踏まえて受領を判断する。
取材した9月中旬時点で、初号機は8月29日にレントンでの初飛行を終えており、エバレットで調整が進んでいる。2号機(JA031A)は最終組立を終え、3号機(JA032A)は主翼や垂直尾翼が取り付けられる前の状態だった。ANAで領収検査員を務める整備センター 品質保証室 航空機製造委託品質チームの桐澤直矢マネジャーが、製造中の2号機と3号機をチェックした。

737-8の領収検査を担うANAの桐澤さん=26年9月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
桐澤さんはミラーやライトを使って機体の構造を目視し、小さな傷やリベットの取り付け状態を確認。737にはリベットが「何十万本」(桐澤さん)も使われている。桐澤さんによると、ANA側が取り付け方法に疑問を投げかけ、ボーイング側も誤りを認めた例もあるという。
ANAの領収検査員は10月1日時点で319人。このうち新造機の領収検査に携わるのは約10-15人で、737専任ではなく、経験や技能に応じて担当を割り当てる。桐澤さんによると、エアバス機も型式に関わらず、領収検査資格を持っていれば新造機の領収業務に従事することができるという。領収検査員は訓練と審査を経た社内資格を持ち、ほとんどが航空機整備に関する国家資格を保有している。検査員は米国に常駐しておらず、日本から渡米し、検査員がその都度交代する。
◇
ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、737-8を最大42機(確定38機、オプション4機)発注済み。同機には車いすに対応した、ユニバーサル仕様のラバトリー(化粧室)を世界で初めて導入するという。737-8は737-800(2クラス166席:プレミアムクラス8席、エコノミー158席)の後継として導入する機材で、運航は737-800同様、ANAグループのANAウイングス(AKX/EH)が担う。

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機=26年9月14日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機=26年9月14日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機の領収検査を進める桐澤さん(上)=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が終了したANAの737-8 2号機=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進むANAの737-8 3号機の領収検査を進める桐澤さん(手前)=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進むANAの737-8 3号機の領収検査を進める桐澤さん=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進むANAの737-8 3号機の領収検査を進める桐澤さん(左)=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進むANAの737-8 3号機の領収検査を進める桐澤さん(左)=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進むANAの737-8 3号機の領収検査を進める桐澤さん=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ボーイングのレントン工場で最終組立が進むANAの737-8 3号機の領収検査を進める桐澤さん(左)=26年9月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
関連リンク
全日本空輸 [1]
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