日本航空(JAL/JL、9201)は9月11日、仏Donecle製の完全自動飛行ドローン「Iris GVI(アイリスGVI)」による機体外観検査のデモ飛行を、羽田空港の格納庫で報道関係者に公開した。従来の目視検査と比べて工数(作業量)を約6割削減できるとみており、本格導入に向けて検証を進めている。

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・1機800枚の画像を自動撮影
・屋外飛行実現が課題
・画像判断は整備士の目
1機800枚の画像を自動撮影
JALは6月末から実機を使った検証を進めている。現時点では本格導入ではなく、従来の目視検査とドローン検査を並行し、同様の検査ができるかを確認している段階。検証は月4回程度のペースで実施しているが、本格導入の時期は決まっていないという。

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローンで撮影された画像=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローンで撮影された画像=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
従来の目視外観検査では、整備士がステップや高所作業車を使って機体各部へ移動し、傷や腐食、塗膜剥がれなどを確認する。Iris GVIを使う場合は、ドローンがあらかじめ設定されたルートを自動飛行して機体を撮影し、整備士が撮影画像を確認する。JALによると、機種や作業によるが、従来の目視外観検査は約5-10時間、ドローンを使う場合は約2-3時間かかるという。しかし、ドローンの導入で作業内容がそのまま置き換わるものではないため、所要時間の単純比較は難しいとしている。一方、作業量でみると、約60%削減できると見込む。
11日のデモ飛行に使用したボーイング737-800型機の場合、1機あたり800枚から900枚程度を撮影するという。11日のデモでは機体左側を飛行し、428枚を撮影した。
検査に携わる人数も減らせる可能性がある。従来の目視検査はケースによって2人以上、3-4人程度で作業するのに対し、ドローン検査は2人で対応し、撮影画像は基本的に1人で確認する想定。検査後に不具合を修理する整備作業の人数が減るわけではなく、作業ごとに人員配置を最適化することも模索する。

仏Donecle製航空機整備用ドローンによる機体外観検査をノートパソコンでモニターするJALの整備士=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALは今回以前にも、別のドローンを航空機の検査に使えないか取り組んだことがある。今回Donecleを選んだ理由について、JALエンジニアリング(JALEC)羽田航空機整備センター整備技術グループの近藤弘理氏は、実際の整備に使うには航空機メーカーの整備マニュアル(MM)で使用を認められていることが大きな条件になるという。
整備マニュアルで認められているドローンメーカーはDonecle以外にも1社あり、JALは両社を比較したという。近藤氏は、使いやすさや使用感などを勘案してDonecleを選んだと説明した。航空機メーカーの整備マニュアルで認められた完全自動飛行ドローンを使い、実際の整備作業として実機を検証するのは国内初としている。
屋外飛行実現が課題
実用化に向けては運用上の課題も残る。JALによると、現在は空港でのドローン飛行が屋内に制限されており、格納庫で飛ばす際は扉をすべて閉める必要がある。作業対象の機体を格納庫へ移動させるのに1-2時間程度かかる場合があるほか、格納庫の扉をすべて閉める作業も時間を要する。近藤氏によると、国土交通省とは「緊密に連携している」とし、情報交換をしながら屋外飛行など実用化へ向けた検討を進める。

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローンで撮影された画像=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALは今年3月からオペレーターの養成や飛行運用の構築などの準備を進め、6月末に実機検証を開始。9月からは機体の塗装状態をモニタリングするトライアル検証も始めた。今年度中には、突発的な被雷検査や部品脱落対策のモニタリングへの活用検証を進める。
Iris GVIによる被雷検査は、エアバスA320ファミリーでは整備マニュアル上認められている一方、737-800と777は対象外。JAL本体には現在A320ファミリーの機材がないため、被雷検査には使えず、メーカー側の対象機種拡大を待って、今後の活用範囲の拡充を検討する。
画像判断は整備士の目
Iris GVIは障害物検知機能を備え、航空機に接触せず完全自動で飛行する。GPS(全地球測位システム)を受信できない格納庫内でもLiDAR(対象物にレーザー光を照射するセンサー)を使って自らの位置を推測し、設定されたルートを飛行する。

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローンを持つ整備士=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
撮影画像はIris GVIの飛行中からノートパソコンへ順次転送され、専用アプリ上で機体のどの場所を撮影したか確認できる。航空機整備で機体各部の位置を示す「番地」も画像上で確認でき、不具合箇所を特定しやすくする。不具合の種類を登録したり、損傷箇所の大きさを画像上で計測したりすることもできる。
撮影画像の解像度は約2400万画素。デモ飛行を行った整備士によると、現在の解像度には満足しているという。一方で、現在は機体に対して正面から撮影しているため、「斜めから撮れると今後違うものも見えてくるのでは」と話した。
従来のリモコン式のドローンでは、操縦する人のスキルに依存する部分があったが、Iris GVIは完全自動飛行であるため、操縦面では属人性はないという。一方、ドローンが撮影した画像を見て不具合を判断する部分は、整備士のスキルや慣れによる属人性が多少残るとの認識を示した。現時点ではAIが損傷の有無を最終判断する運用ではなく、整備士が画像を見て判断することが前提となっている。
JALはドローンの活用で、高所作業に伴う安全リスクを減らしながら、整備作業の効率化と検査品質の向上を目指す。

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローンをコントロールするソフトウェア=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローンをコントロールするソフトウェア=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの737-800の機体外観検査の検証に使用される仏Donecle製航空機整備用ドローン=26年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
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