全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)、日本航空(JAL/JL)、羽田空港のターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)の3社は7月27日、航空機を利用した人身取引の防止を訴える啓発サイネージを羽田空港に設置した。国連が定める30日の「人身取引反対世界デー」を前にした取り組みで、28日にはANAHDとJALが初の合同研修を開く。

羽田空港で人身取引防止を訴えるデジタルサイネージを披露するANAホールディングスの保谷智子執行役員兼グループCSO(右)、JALの江尻祐子人財本部副本部長(左)、日本空港ビルデングの髙橋歩上席常務執行役員=26年7月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
啓発動画は、成田、羽田、中部の3空港で7月下旬から流す。動画素材は国際移住機関(国連IOM)が提供し、空港を訪れる人に人身取引防止への理解を呼び掛ける。ANAHDは昨年度から成田で啓発を始めており、今年度は羽田と中部にも広げた。
28日の合同研修には、ANAとJALの客室乗務員やグランドスタッフ(地上旅客係員)が約30人参加。国連IOMやIATA(国際航空運送協会)、成田国際空港会社(NAA)、日本空港ビルも協力し、グループディスカッションや発表を通じて、実践的な知見を共有するという。

羽田空港で人身取引防止を訴えるデジタルサイネージを披露するANAホールディングスの保谷智子執行役員兼グループCSO(右)、JALの江尻祐子人財本部副本部長(左)、日本空港ビルデングの髙橋歩上席常務執行役員=26年7月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAHDの保谷智子執行役員兼グループCSO(最高サステナビリティ責任者)は、人身取引について「身近な人権侵害であり犯罪」とした上で、知ってもらうことが大きな抑止力につながると述べた。
ANAグループは、2018年12月に人身取引に関する勉強会を初開催し、2019年4月には機内で人身取引の事案を発見した場合の手順を規定化した。保谷氏によると、ANAが当局へ通報に至ったケースはまだないものの、「昔だと“お節介”と言われていたことが犯罪抑止につながる」として、海外の事例などを基に客室乗務員やグランドスタッフが対応手順や報告ルートなどを確認するという。
JALの江尻祐子人財本部副本部長は「業界全体での連携が不可欠」と話す。家族連れとみられるのに、小さな子供に話をさせないなど、乗客とのやり取りで違和感を感じるケースを中心に対処しているという。子供だけでなく、大人の女性が芸能関係の仕事と聞かされて来日したものの、人身取引につながるケースもあることから、利用者の年齢や性別を問わず、客室乗務員やグランドスタッフが不審に感じた際に、行動を取れる体制を強化していくという。
航空機は、被害者が逃げ出せない環境で長距離を移動できるため、人身取引に利用されるケースがある。警察庁によると、2024年は63人の被害者を認知し、96件57人の被疑者を検挙した。被害者63人のうち58人が日本人で、日本人の中で41人は18歳未満だった。
関連リンク
全日本空輸 [1]
日本航空 [2]
日本空港ビルデング [3]
国際移住機関 [4]
人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策 [5](警察庁)
・ANAと成田空港、人身取引防止セミナー JALも要綱策定、業界全体で防止へ [6](20年12月10日)