日本の航空各社は、マイレージ制度の見直しや国内線への燃油サーチャージ導入といった経営課題に直面している。日本航空(JAL/JL、9201)の路線事業本部長を務めるロス・レゲット専務が当紙の取材に応じ、JALのマイレージ制度について、現時点で他社と同様の見直しは予定していないとした。国内線サーチャージはワンコインや1000円以下を一つの目安として挙げ、路線維持には幹線以外での航空各社の協業や供給調整も必要との認識を示した。

リオデジャネイロでインタビューに応じるJALのロス・レゲット専務=26年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
国際線は羽田・成田を軸としつつ、地方空港への乗り入れや共同事業パートナーの機材活用、国内線機材の近距離国際線への投入の検討状況にも言及した。大型貨物機は2030年ごろを目標に検討しており、運休中の羽田-ドーハ線については「もうやめるという判断にはなっていない」と述べた。一問一答は以下の通り。
—記事の概要—
・マイル見直し「今はそのつもりない」
・地方空港の国際線「乗り入れ考える必要」
・国内線「幹線は競争、幹線以外は協業」
・大型貨物機「2030年ごろ目標」
・ドーハ線「やめる判断ではない」
マイル見直し「今はそのつもりない」
── 航空会社のマイレージ特典見直しが話題になっている。JALは非航空系の事業に力を入れているが、JAL便や提携航空会社に乗る際のマイルの満足度をどのように高めていくのか。
マイル全体では、日常的にマイルを貯め、非日常で使うのが現在のコンセプトだ。普段の買い物やレストランで貯め、飛行機や最近増えているイベント関連などで使っていただく。ただ、飛行機に乗って貯めることが基本中の基本であり、そのコンセプト自体が変わったわけではない。

JAL「どこかにマイル」10周年をPRするCMキャラクターの広瀬すずさん=26年2月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
以前は特典航空券の設定を限定していたが、現在は「特典航空券PLUS」で、どの便でも最後の1席まで設定できるなど、貯めたマイルを使いやすくする方向だ。ライフステータスでは、一生を通じて積み上げ、一度得たステータスをそのまま生かしていけることが特徴だ。
提携パートナーはワンワールド加盟航空会社が中心だが、それ以外も拡大していく。現在はシステムを刷新しており、1、2年かかるが、新しいパートナーを増やしていくのが基本方針だ。
── 全日本空輸(ANA/NH)の制度見直しを受け、JALも同じように見直すのではないか、と気にしている利用者もいる。
今はそのつもりはない。
地方空港「乗り入れ考える必要」
── 北米の航空会社が新千歳空港への直行便を発表するなど、羽田や成田以外の空港に注目している。JALは地方空港を活用した国際線や以遠権路線をどのように見ているか。
現在の路線戦略は、引き続き成田と羽田が中心だ。羽田は国内線との乗り継ぎ、成田は北米-アジア間の乗り継ぎを担うという基本スタンスは変わっていない。JAL自身が新たにどこかを拠点にすることは、今のところ考えていない。

那覇空港で開かれた台北線就航式典に初代(左)から現行7代目まで歴代制服を着用して勢ぞろいしたJTAの客室乗務員=26年2月3日 PHOTO: Daigo TAKENOBU/Aviation Wire
過去にはバンクーバーやメキシコなどを経由する路線もあった。経験上、テクニカルランディングや経由地を挟んだ2地点間の輸送は、現在はなかなか厳しい。
一方で、日本がインバウンド6000万人を目指す中、羽田、成田、関空だけのインフラでは間に合わないだろう。何らかの形で地方空港への乗り入れを考えていかなければならない。最近では日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)が那覇-台北線を開設した。
JAL本体は基本的に羽田を使うが、LCCがどうするかという点もある。カーフューがある中で機材の稼働時間を上げるには、地方空港も検討していかなければならない。
また、JALの機材だけでなく、共同事業のパートナーのリソースを活用することも最近の方向性だ。マレーシア航空(MAS/MH)が関西へ飛んだり、フィンエアーが関西や中部への路線再開を検討したりしている。メタルニュートラルの考え方に基づき、パートナーの機材を使っていくことになるだろう。
── 将来、国内線用の機材を近距離国際線で活用することもあるのか。
その考え方はある。越えなければならない課題がいろいろあるため、すぐにはできないが、将来的にはあり得る。
地方空港で夜間駐機している国内線機材を活用できればよいが、決まったものはない。国内線用の機材を使うだけでも、サービス面などさまざまなことを考えなければならず、簡単に使えるものではない。
国内線「幹線は競争、幹線以外は協業」
── JALは国内線への燃油サーチャージ導入を検討している。サーチャージだけでは国内線の課題解決は難しいが、持続可能な事業にするには何が必要か。
国内線の利用を増やすには、一つは「関係人口」の取り組みで、乗る回数を増やしていただくことだ。もう一つはインバウンドだ。日本の人口が減少する中で、インバウンドをどう増やすかが課題になる。

グラハン資格の相互承認でマーシャリング資格を取得し、仙台空港でANAのビブスを着用してJAL便をスポットへ誘導するグランドハンドリングスタッフ=24年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
海外で日本の地方の魅力を知っていただく必要があり、国と一緒に取り組まなければならない。地方空港ではグランドハンドリングも人手不足になっており、業界全体で地方の人にも働きやすい環境をどうつくるかが課題だ。
国の検討会では、競争する部分と協業する部分を路線ごとに考えている。決して棲み分けではなく、幹線は競争し、幹線以外では協業する形になるだろう。離島路線や生活路線は、ANAなど国内の航空会社と協議していく。空港周りでも、グランドハンドリングなど2社が重複している部分を協業できればよい。
── 国内線サーチャージの金額は、どの程度を想定しているのか。
まだ決まっていない部分が多いが、ワンコインや1000円以下といったイメージだ。導入する場合は、燃油価格に基づくテーブルを設定し、国に届け出る。
国内線は距離が短いため、国際線のような金額には基本的にならないだろう。
── サーチャージだけで現在の燃油高に対応するのは難しいのではないか。
運賃を上げる部分もあるだろう。
もっと言えば、国内線は(供給が)多すぎる。そこをどう減らしていくかが課題になる。幹線は競争し、幹線ではない路線は協業する。コードシェアなども十分考えられる。
大型貨物機「2030年ごろ目標」
── ビジョン2030に大型貨物機の導入が盛り込まれている。検討状況は。
現在検討中だ。アジアから北米へ向かう貨物も非常に増えており、需要は維持できると見ている。具体的にいつ導入できるかという進捗はないが、社内で検討を始めている。一つの目標は2030年ごろだ。
現在はボーイング767型貨物機3機を近距離アジアで運航している。
ドーハ線「やめる判断ではない」
── 運休している羽田-ドーハ線について、カタール航空が自社便を再開する中、JALは今後どのようにするのか。

羽田空港を出発するJALのドーハ行き初便JL59便=24年3月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ドーハ線は非常に大事な路線だ。戦略的に欧州だけでなく、中東やアフリカも今後成長する市場であり、大きな意味があった。
ただ、現在の中東情勢では、JALの安全基準に照らすと運航再開を判断できない状態だ。安全基準をクリアできれば、またやりたい。
── カタール航空に任せ、JALは撤退するのではないかとの見方もある。
今、あの路線を諦めた、もうやめる、という判断にはなっていない。
懸念があるとすれば、需要そのものが戻らないことだ。日本発とカタール発の双方に需要があって飛ぶ路線なので、そこがなかなか戻らないのではないかという懸念がある。
── 再開を決めた場合、どの程度の準備期間が必要か。
再開すると決めても、準備には大体2カ月ぐらい必要になるだろう。戦争が終わっているか、他社がどの程度運航しているかなどを、現在も日々モニターしている。旅客と社員の安全を確保できることが前提だ。

リオデジャネイロでインタビューに応じるJALのロス・レゲット専務=26年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
現在はドーハ線の機材リソースを別の路線で使わなければならないため、すぐ簡単に戻すのは難しくなるかもしれない。ただ、路線を諦めた、もうやめるという判断ではない。
── 運休中の機材はどのように使っているのか。
ロンドン線の2便目に使っている。羽田を深夜に出発する便をボーイング787-8型機から787-9に大型化している。
── 中東情勢が長期化すれば、判断が変わる可能性もあるのか。
半年後にどうなるかはわからない。長く続けば考え方が変わるかもしれないが、今は社内で早く路線を切ろうという雰囲気はない。社長以下、様子を見ている状況だ。
ドーハ
・JAL、ドーハ維持 レゲット専務「中東・アフリカは成長市場」 [3](26年6月10日)
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・JAL、羽田-ドーハ就航 日系初の中東直行便、欧州・アフリカ・南米へ乗継 [5](24年4月1日)
国内線
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・JAL、国内線サーチャージ検討 27年4月視野、FDAに続き2社目 [7](26年3月3日)
大型貨物機
・JAL鳥取社長、大型貨物機の導入検討 新経営計画「長距離供給増やす」 [8](26年3月2日)