- Aviation Wire - https://www.aviationwire.jp -

大韓航空、アシアナ統合後の路線・機材「われわれも必要」“親日家”崔副社長インタビュー

 韓進(ハンジン)グループ傘下の大韓航空(KAL/KE)は、アシアナ航空(AAR/OZ)との企業統合を進めている。グループは2024年12月にアシアナの株式を取得し子会社化。大韓航空は新しいCI(コーポレートアイデンティティ)を今年3月11日に発表し、1984年以来41年ぶりに新ロゴを導入したほか、機体デザインも刷新した。

ソウルの本社でインタビューに応じる大韓航空の崔副社長=25年11月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 大韓・アシアナの統合はどのように進めるのか。重複する機材や路線の行方は。統合による人員削減は。グループ内に3社となったLCC(低コスト航空会社)の行方は──。福岡支店や東京旅客支店などでの勤務歴があり、日本地域本部長も務めた“親日家”の崔晶皓(チェ・ジョンホ)副社長に、ソウル・金浦空港近くにある同社の本社で話を聞いた。崔副社長は「日本ファン」を自認しており、堪能な日本語で取材に応じた。

—記事の概要—
統合後の目標は「最も愛される航空会社」
両社の差「そこまで違いはない」
重複路線「旅客が望むスケジュールに」
機材合理化「考えていない」

統合が進む大韓航空(手前)とアシアナ航空=25年11月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

統合後の目標は「最も愛される航空会社」

──統合後の新体制にはいつごろ移行するのか。

崔副社長 現在準備を進めている。完全統合は2026年12月をめどとする。

──統合による効果と今後のビジョンは?

崔副社長 単にFSC(フルサービス航空会社)2社が1つになるのではなく、現在よりもネットワーク(航空網)が豊富になる。航空会社にはネットワークや機材の競争力が非常に重要だ。また、サービスや安全面も同様に重要。そういう部分を生かし、旅客に良いサービスを提供し、安全に運航したい。

 営業面はそのあと、結果として繋がる。大きな目標は、世界中の人から「最も愛される航空会社になる」こと。簡単ではない。

 韓国にはLCCを含め、たくさんの航空会社がある。私たちも(大韓航空系の)ジンエアー(JNA/LJ)、(アシアナ航空系の)エアソウル(ASV/RS)とエアプサン(ABL/BX)の3社があり、3社の統合もともに進めていく。形は違っても、韓国国内でいい競争をする。われわれは他者と違い機材も多く、新しい機材もたくさん投入している。

両社の差「そこまで違いはない」

──両社の社風はやや異なると思うが、統合後の両社社員のモチベーション向上などでの施策は。

崔副社長 同じ韓国人、同じ人間なので、そこまで違いがあるとは思わない。別会社として(アシアナ設立の1988年から)38年近く過ごしているものの、大きな差はないと思う。現在、われわれの経営陣がアシアナ航空に入り、経営に参画している。雰囲気の差などは少しあるかもしれないが、(24年12月の子会社化から)1年間グループ会社として経営してみたら、心配しているほど差はあると感じてないので、ありがたく思う。

 ただ、サービスやルール、プロセスなどの差が少し存在する。そういう部分の差は、統合前にすべて統一する。現在はその過程だ。

 アシアナ側からすると、不安な気持ちがまったくないとは思わない。そういう部分はわれわれも考えている。例えば、客室乗務員や整備士が1つになるイベントや、労働組合が主催するイベントも共催する。格納庫に従業員の家族を招く交流会に、アシアナの家族も招く。

 また、両社の乗務員は海外で異なるホテルを利用している場合が多い。今は(ホテル利用の)契約が一部残っているが、同じホテルでの交流会により、お互いの理解を深めている。このようなプロセスが、意外と効果があるのが分かってきた。

 安全面などはすでに統合が進んでいるレベルだが、営業面は競争している。いままでは違う会社で、漠然とした不安感が間違いなくある。工夫しながらいいハーモニーを築いていきたい。安全はともに追求していく目標だ。

金浦空港にある大韓航空の格納庫で整備が進む新塗装を施した737-900ER=25年11月25日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

重複路線「旅客が望むスケジュールに」

──2社で重複する路線は統合後、どのような扱いになるのか。

崔副社長 ご存じのように韓国は国内がそんなに広くないので、国際線が多くなる。(両社で)狙ってる路線は一緒で、重複するのは自然なこと。重複路線はスケジュールを調整し、旅客の利便性向上を図る必要性がある。

 (調整後は)便数が増え、旅客が望むスケジュールに変更することで、満足できるようなサービスを提供できると思う。米国のほか、日本路線もかなり重複している。日本路線は両社合わせると毎日50便ぐらい飛ばしている。

 ニーズに合わせたスケジュールに変更したいが、空港のスロット(発着枠)などの問題もある。すべてが望むものにはならないかもしれないが、できる限りいい形でのスケジュールにしたいと考えている。

機材合理化「考えていない」

──両社統合により、機材数がかなり増える。機材や機種の合理化は考えているか。

崔副社長 両社の機種はほとんどが重複する。航空会社にはサービスのほか、安全面でも機材の競争力が重要だ。燃費が良く、安全が担保される機体で、いい座席が必要。競争力を持つために、新機材と入れ替える計画も立てている。

──ということは、機種数や機材の削減はまったく考えていない?

崔副社長 両社が統合し、1つのチームになっても従業員が減るわけでもない。アシアナが必要な路線は、われわれにも必要だ。老朽化した機材は別として、現在ある機材は有効活用したい。あまりにも収益性が悪い路線は運休が当然の流れだが、統合したからといって、パイロットや客室乗務員などの従業員も含め、人為的に減らすことはない。

──3社あるLCCの今後はどうなるのか。

崔副社長 LCCも1つの会社としてスタートし、ジンエアーに統合する。(大韓・アシアナと)同じくらいの時期になるのではないか。(各社が拠点とする)ソウルと釜山の2都市をうまく活用し、競争力のある航空会社にしていきたい。

韓進グループ3社のLCCはジンエアー(手前)に一本化=25年11月25日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

関連リンク
大韓航空 [1]
アシアナ航空 [2]

大韓・アシアナ、Starlinkで機内Wi-Fi 26年下期以降、傘下LCC 3社にも [3](25年12月5日)
大韓航空の崔副社長、アシアナ統合後LCCはジンエアー1本化 FSC機材・人員削減せず26年末新体制 [4](25年11月27日)
アシアナ航空、仁川空港ターミナルを変更 1/14からT2へ [5](25年11月4日)
大韓航空、仁川拡張部に新ラウンジ リニューアルも一部完了8/18オープン [6](25年8月15日)
大韓航空、41年ぶりロゴ刷新 新塗装787-10初便は3/12成田行きKE703便 [7](25年3月11日)
大韓航空、機内食とアメニティ刷新 新ロゴとともにサービス強化 [8](25年3月11日)
大韓航空、アシアナ株取得し子会社化 準備期間後に合併へ [9](24年12月12日)