ボーイングは、米サウスカロライナ州ノースチャールストンにある787型機の製造拠点「ボーイング・サウスカロライナ(BSC)」の敷地拡張に着手したと現地時間11月7日に発表した。787ファミリーの生産体制を強化するもので、現在の月産7機を2026年に同10機へ引き上げる計画を進める。起工式には、スコット・ベッセント財務長官も出席した。

ボーイングが拡張するノースチャールストンの「ボーイング・サウスカロライナ」=PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire
今回の拡張は、2024年末に発表された1000人の新規雇用創出と10億ドル超の設備投資計画に基づくもので、チャールストン国際空港に隣接する「空港キャンパス」と、既存の別キャンパスを拡張し、2拠点体制として再編する。現在と同規模となる約11万平方メートルの新しい最終組立工場を建設し、機体の組立工程や支援機能、事務スペースなどを備える。
空港キャンパスには、部品の前処理エリアや垂直尾翼の塗装施設、試験飛行用スポットなどを新設。内装品を製造する「インテリア・レスポンシビリティ・センター」も拡張する。建設はHITTコントラクティングとBE&Kビルディング・グループのJV(共同事業体)が担う。

BSCの787第2最終組立工場の完成予想図(ボーイング提供)

BSC拡張工事の起工式に出席するボーイング民間機部門のステファニー・ポープ社長兼CEO(中央左)とスコット・ベッセント財務長官(同右)ら(同社提供)
BSCは2011年6月に完成し、2012年10月に最初の機体をエア・インディア(AIC/AI)へ納入。現在は787-8、787-9、787-10の787ファミリー全3機種を生産している。従業員数はノースチャールストンとオレンジバーグを合わせて約8200人で、これまでに1200機以上を引き渡した。累計受注は2250機を超え、今年は300機以上の受注を獲得し、受注残は約1000機にのぼる。
ボーイング民間機部門のステファニー・ポープ社長兼CEO(最高経営責任者)は「787の効率性と多用途性に対する強い需要が続いており、顧客のニーズに応え続けるための重要な投資だ」と強調。「この拡張は、当社従業員、サウスカロライナ州、そして米国の製造業への揺るぎないコミットメントを示すものだ」としている。
ベッセント財務長官は「トランプ大統領の指導のもと、米国の産業基盤が再建されつつあり、サウスカロライナ州のような製造業の州に再び活力が戻ってきている」と述べた。
ボーイングは、2カ所あった787の最終組立工場をBSCに集約。シアトル近郊のエバレット工場での787の製造は2021年に終了している。

BSCの最終組立工場=PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire
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