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シコルスキー、UH-60を無人機「U-Hawk」に 操縦席なくし貨物室25%大型化

 ロッキード・マーチン(LM)傘下のシコルスキーは、UH-60L「ブラックホーク」をベースにした無人多用途ヘリコプター「S-70UAS U-Hawk」を開発したと発表した。コックピットをなくし、25%大型化された貨物スペースを設け、偵察ドローンの発射やミサイルの輸送など、さまざまな任務に対応できる構造へ改修した。構想から10カ月で開発を終え、2026年に初飛行を予定している。

UH-60Lを基に開発した無人多用途ヘリコプター「S-70UAS U-Hawk」(シコルスキー提供)

 U-Hawkは、観音開きのドアとランプを備えた機首構造を採用。従来の操縦席やシート類、搭乗設備を撤去し、低コストの第3世代フライ・バイ・ワイヤ(FBW)とMATRIX自律飛行技術を統合したことで、完全自律飛行が可能となった。試作はシコルスキーの技術開発部門「Sikorsky Innovations」が主導している。

 新設計により、U-Hawkは通常のブラックホークと比べて貨物スペースが25%拡大。長尺貨物の搭載や無人地上車両(UGV)の乗降、補給物資のロールオン/オフ、偵察・攻撃型ドローンの群発射、追加燃料タンクによる航続距離の延長といった多用途任務を担う。HIMARSの6連装ポッドやNaval Strike Missiles×2の輸送にも対応可能で、最大で1600海里(約12963km)以上の自力展開や、14時間の滞空も実現できる。

 操作はタブレット端末1つで完結する。観音開きドアの開閉、ランプ操作、ミッション入力は自動化されており、MATRIXシステムがカメラやセンサー、アルゴリズムを使って飛行経路を生成する。側面ドアからの積載や、最大9000ポンド(約4080kg)の吊り下げ輸送能力も維持されている。

UH-60Lを基に開発した無人多用途ヘリコプター「S-70UAS U-Hawk」(シコルスキー提供)

UH-60Lを基に開発した無人多用途ヘリコプター「S-70UAS U-Hawk」の概要(シコルスキー提供)

 シコルスキーのリッチ・ベントン副社長兼ゼネラルマネージャーは、「1年足らずで実用機を完成させ、有人ブラックホークから多任務無人機への改修を再現性のある形で実現した。U-Hawkはブラックホークの伝統を引き継ぎつつ、UASとして新たな能力をもたらす」と述べた。

 また、開発責任者であるイゴール・チェレピンスキーSikorsky Innovationsディレクターは、「UH-60との共通性を活かしてコスト削減を図った。航空機管理コンピューターや作動機構、機体構造の改修で得た効率性は、今後のUAS製品にも展開していく」と語った。

関連リンク
U-Hawk [1]
Lockheed Martin [2]

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