全日本空輸(ANA/NH)と日立製作所(6501)の両社は7月15日、悪天候などの「イレギュラー」で遅延や欠航が生じた際、運航ダイヤの修正案を高速・最適に自動立案するシステムを国内線に導入したと発表した。日立100%子会社の日立コンサルティング(東京・千代田区)との共同開発したシステムで、イレギュラー時の修正作業が数時間単位で短縮でき、利用客への影響を最小限に抑える。両社によると同様のシステムは国内の航空会社として初めてだという。

ANAと日立が開発したイレギュラー発生時の運航ダイヤの修正案を自動立案するシステムの概要図(両社の資料から)

イレギュラー発生時の運航ダイヤの修正案を自動立案するシステムを導入したANA=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
新システムは7月から導入済みで、悪天候などによる運航ダイヤの乱れが予測・発生時に、運航スケジュール、整備計画、乗務員計画、空港での各種条件などのデータを収集・解析し、運航ダイヤの修正案を自動で複数立案。変更に伴う機材の整備計画を自動修正する。ANAのオペレーション担当は、提示された複数の修正案から最適案の選択が可能となり、修正ダイヤ決定までの時間短縮と運航品質の向上を両立させる。
同システムの導入により、修正案検討の所要時間を最大で70%短縮するほか、台風の進路や速度など天気予報の変化に、何度でも柔軟に対応できるようになる。また、オペレーション担当者は短時間で修正ダイヤの立案と判断に迫られることから、心理的負担を軽減でき、複数の修正案比較できることから運航の安定性向上にもつながる。
従来の運航ダイヤ修正は熟練社員の経験とノウハウに頼る部分も多く、人材育成や修正案策定までの所要時間に課題があった。限られた時間内で複雑な条件を考慮した“最適解”を求める必要があることから、オペレーションマネジメントでのイノベーションが求められていた。
ANAと日立、日立コンサルティングの3社は、課題解決に向けたシステム構築へ実証実験をの2019年に開始。自動立案されたダイヤ修正案の品質が、人力のものと同等の水準となった。特に台風など規模の大きな運航の乱れにおいては、数時間単位の作業時間の短縮が可能となったという。
日立は製造業で生産計画を自動化するなどのノウハウを持っており、「Lumada(ルマーダ)」とブランディングしてサービスを提供。今後はANAの国際線や海外の航空各社にも展開していきたい考え。
関連リンク
全日本空輸 [1]
日立製作所 [2]
日立コンサルティング [3]
・ANAと日立、運航ダイヤ修正自動化へ イレギュラー対応の職人芸、システムで [4](20年3月5日)
・「迷っても迷わなくても、決断下す」ANA初の女性オペレーションディレクター [5](15年9月6日)