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JALエンジニアリング、自律型eVTOLの実証飛行実現へボーイング系Wiskや加賀市と基本合意

 日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する整備会社JALエンジニアリング(JALEC)は現地時間6月16日、ボーイングの完全子会社でeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発する米Wisk Aero(ウィスク・エアロ)、石川県加賀市の3者で、パイロットが搭乗しない「無操縦者航空機」の実用化を視野に入れた実証飛行に関する基本合意書(MoU)を締結したと、同日開幕したパリ航空ショーで発表した。パイロット不足が問題となる中、2030年代以降のeVTOLの運航本格化を見据え、自律飛行で安全に運航できる環境づくりに着手する。

パリ航空ショーで無操縦者航空機の社会実装に向けた実証飛行に関する基本合意書を締結したWiskのセバスチャン・ヴィニョロンCEO(左から2人目)とJALECの秡川宏樹取締役(同4人目)ら=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

無操縦者航空機の社会実装に向けた実証飛行に関する基本合意書を締結したWiskのセバスチャン・ヴィニョロンCEO(左)とJALECの秡川宏樹取締役(JAL提供)

 eVTOLは、実用化の初期段階ではパイロットが乗務するものの、将来的には操縦者が搭乗しない自律飛行型が主流になるとみられている。パイロット不足への対応や、運航コストを抑えて地方都市にも導入しやすくする狙いがあり、ヘリコプターなど既存の有人航空機や、少量の貨物しか運べないドローンでは実現が難しい、交通の便が悪い地域の移動手段や、災害発生時の物資輸送といった分野への導入が期待されている。

 今回の協定は、航空機整備に関するJALECの技術的知見、パイロットが搭乗しない自律飛行型eVTOLを開発するWiskの技術、国家戦略特区で先進的な取り組みを進める加賀市の3者の強みを組み合わせ、今後の制度設計に資する実証飛行を推進することが目的。空の移動の自由度拡大や経済性向上を図るとともに、安全性の確保も目指す。

パリ航空ショーでWiskの第6世代機を説明するセバスチャン・ヴィニョロンCEO=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 Wiskは、ボーイングが2023年に100%子会社化。2017年に米国で初めて旅客用に設計された自律飛行型のeVTOLの飛行に成功しており、パリ航空ショーでは、最新の第6世代機のモックアップが会場に展示された。

 Wiskが開発するeVTOLは、4人乗りで完全自律型。将来的なパイロット不足への対応や運航コストの削減、都市部での移動手段多様化などが期待されている。一方で、これまでにない航空機であるため、制度や運航環境の整備が不可欠となる。

 JALECの秡川宏樹取締役執行役員は「JALの航空会社としての長い歴史の中で、航空機の整備に多くの経験と知識がある。日本でのeVTOLの社会受容性や法制度の整備に役立てていきたい」と話す。eVTOLの実用化に加え、機体整備の受託も視野に、実証飛行による検証を進めていきたいという。

 JALとWiskは、eVTOL運航の制度設計や整備に関する基本合意を2023年5月に締結。JALと加賀市も、サステナブル(持続可能)な地域づくりに向けた包括連携協定を2024年10月に締結している。2030年代以降のeVTOL本格運航を見据え、3者は加賀市を舞台に、制度設計の裏付けとなる技術的知見の蓄積を進め、日本国内での早期社会実装を目指す。

パリ航空ショーに出展されたWiskの第6世代機のモックアップ=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーに出展されたWiskの第6世代機のモックアップ=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーに出展されたWiskの第6世代機のモックアップ=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーに出展されたWiskの第6世代機のモックアップ=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーに出展されたWiskの第6世代機のモックアップ=25年6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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