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空の上の結婚式、セントレアで挙行 ANA現役チーフパーサーが発案

 中部空港(セントレア)で10月20日、空の上の結婚式が行われた。全日本空輸(ANA)グループとの共同イベント「20,000フィートのバージンロード」として実施。機材はANAウイングス(AKX)のボンバルディアDHC-8-Q400型機が使用され、便名は2013年にちなんだANA2013便と名付けられた。ANAグループ社員や空港職員のほか、管制官もフライトをサポートした。

機内挙式でキスをする鈴木啓太さん(左)と絵里加さん=10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

管制官も「全力サポート」

新郎新婦の似顔絵が飾られた中部空港のカウンター=10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 同企画はANAグループ社員の自発的提案活動「ANAバーチャルハリウッド」の企画から生まれた。中部空港内での挙式数が500組を迎えたことから、記念イベントとして行った。約1カ月半の応募期間に5組の応募があり、鈴木啓太さん(29)と絵里加さん(29)夫妻が505組目として式を挙げた。

 中部発中部行きANA2013便には、72人の列席者と乗員6人(運航乗務員2人、客室乗務員4人)が搭乗。新郎新婦が使用したタラップには、ハート型の風船が飾り付けられた。

 管制塔から「本日のフライトを管制官一同、全力でサポートします」とのメッセージが機内に寄せられた後、午後3時14分に出発。新郎新婦ゆかりの地である日進市上空などをフライトし、1時間後の午後4時14分に戻った。

出発を控え、カメラに手を振る竹田機長=10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機内では新郎新婦が生まれた1984年にちなんだヒット曲などをはさみながら、ラジオ番組をイメージした機内アナウンスで新郎新婦の人となりやエピソードを紹介。赤いモールで制作した「幸せの赤い糸」を二人が結び、ウェディングキスをすると機内は拍手で包まれた。この企画に応募した理由を、新婦の絵里加さんは「記憶に残る式を挙げたいと友人に相談したところ、見つけてくれました」と話した。

 操縦桿を握った竹田善朗機長によると、悪天候のためベルト着用サインを消灯できない可能性もあったが、他機からの情報などを基に飛行ルートを計画より東寄りにしたところ、サインを消灯できたという。「DHC-8の限界となる2万5000フィートまで高度を上げました」と話す竹田機長は、着陸もきれいにできたことで、安堵していた。

 チーフパーサーの村上絵里香さんは、「失敗できない特別なフライトでしたが、無事成功してよかったです」と話した。

昭和30年代にも機内結婚式

 企画を発案した成宮真樹子ディレクターは、ANAの現役客室乗務員。普段は国際線を中心にチーフパーサーとして乗務している。企画を実現するにあたり、ANAグループ内のさまざまな職場の8人が、実際に顔を合わせて打ち合わせする機会を多く作り、1年半の準備期間をかけて進めてきたという。列席者が身につけたコサージュも、ロサンゼルス勤務のメンバーが作り方を教えて手作りした。

成宮さん(左から4人目)ら企画メンバー=10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 成宮さんが空の上の結婚式をやりたいと考えたのは、11年に乗客が行った機内でのプロポーズがきっかけ。ANA社員も可能な範囲で手伝った“プロポーズ大作戦”は見事成功したという。この話を知り、バーチャルハリウッドに応募した。

 その後、プランを知った社員から、昭和30年代にも同様の挙式があったとアドバイスを受ける。成宮さんが乗務の合間に羽田の資料室を探すと、挙式の様子を伝える昭和36年と37年の新聞が見つかった。これらの情報を参考に、自分たちのアイデアを盛り込みながら準備を進めていった。

 成宮さんは当初、羽田や成田から直接海外に向かうようなものをイメージしていたが、発着枠や機材繰りを考えると現実的ではなかった。悩む成宮さんに「中部空港はどうか」というアドバイスが寄せられ、中部空港に決定した。「実現できないと言われて燃えました」と、苦闘した日々を振り返る。

 「私よりも実際に準備をしてくれた人たちのおかげで、この日を迎えられたんです」と力説する成宮さん。離陸の瞬間はうっすらと涙を浮かべていた。「今回の挙式が、ANAらしさの伝承になれば」と感想を語る成宮さんに、来年も同じイベントがあったらどうするかを尋ねた。「もちろん関わりたいです!」。即答だった。

出発を控えたANA2013便のQ400=10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

列席者を迎える地上係員=10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire