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JAL、成田に医薬専用定温庫 国内空港最大、売上25%増へ

 日本航空(JAL/JL、9201)は9月30日、成田空港に新設した医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT(JALメディポート)」を報道関係者に公開した。10月1日から定温庫を使った保管サービスを始める。JAL初の取り組みで、総面積は国内空港内では最大規模となる。今後2-3年で医薬品の貨物収入を2021年度実績比で25%増を目指す。

JALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」で医薬品を運ぶ電動フォークリフト=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
GDP基準法制化前に準備
羽田着も集約

GDP基準法制化前に準備

 医薬品の製造工場は、国内のほかスイスやドイツ、北米などを中心に設置されており、現在は輸入医薬品の60.8%が成田で通関が行われ、25.4%で2位の関西空港と大きな開きがある。厳格な温度・時間管理などが求められる医薬品輸送は、製薬会社やフォワーダー(利用運送事業者)の受け入れ体制が成田周辺で構築されていることから開設したもので、羽田に到着する医薬品も成田の定温庫に陸送し、通関後に各地へ運ぶ。

成田空港に開業するJALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 新設したメディポートの広さは840平方メートルで、成田空港の貨物ターミナル地区に新設。国内空港の定温庫は関空が750平方メートル、羽田が250平方メートル、成田の他社が141平方メートル、中部が124平方メートルで、メディポートが国内最大となる。

 医薬品の中でも、治験薬や試薬、ワクチンなどは厳格な温度・時間管理と輸送品質が求められ、ほとんどが航空貨物で運ばれている。医薬品の輸送品質に対して、欧州では「GDP(Good Distribution Practice:適正流通)基準」と呼ばれる医薬品が製造工場から患者の手元に届くまでの流通過程の品質保証を目的とした基準が設けられており、国内でも適用に向けた法制化の検討が進んでいる。

成田空港に開業するJALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」の冷蔵室=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 GDP基準では、空港での温度管理機能や清潔な衛生環境、セキュリティ機能、BCP対策などを備える医薬専用定温庫が求められる。メディポートは、2度から8度に設定できる冷蔵室と、15度から25度の定温室のほか、庫内の温度変化を抑えるため、搬出入時の空気流出入を緩衝する前室、防熱扉、高速シートシャッター、エアカーテンを完備。温度監視システムで常時モニタリングし、充電式定温コンテナを複数台同時に再充電できる。

 また、定期的な清掃や防虫・防鼠対策を実施し、排気ガスによる粉塵や外部からの病害類の持ち込みを予防するため、定温庫内専用器材として電動フォークリフトと輸送用パレットを用意した。庫内の空調機器はバックアップを完備し、関係するスタッフ全員が医薬品取り扱いのための社内専門教育を受講している。

羽田着も集約

 JAL貨物郵便本部事業推進部の梅原秀彦部長は「医薬品輸送はものすごく伸びており、専用倉庫が不可欠。JALは1980年代から医薬品を輸送しており、メディポートをフル活用して安全で高付加価値のサービスを提供し、社会課題の解決に役立ちたい」と抱負を語った。

成田空港に開業するJALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」の定温室=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港の医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」について説明するJAL事業推進部の梅原部長=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本での医薬品の輸出入は過去10年間で2倍に成長。「以前から専用倉庫を考えていたが、本格的に動き出したのは2021年度に入ってから」(梅原氏)と述べた。また、一般貨物は徐々に単価が下がっているものの、医薬品はもともと高価格帯のため変動が少ないという。

 医薬品は旅客機の床下貨物室(ベリー)で運べるため、今後国際線の運航再開が本格化すると羽田に着くものも増える。温度・衛生管理したトラックを使い、羽田から約1時間30分でメディポートまで運ぶ。羽田の貨物施設が自社のものではないことや、従来から成田に医薬品が空輸されてきたことで周辺設備もそろっていることから、メディポートにいったん集約する方式をとる。

 JALはIATA(国際航空運送協会)が定める高品質医薬品輸送認証制度「CEIV-Pharma(CEIVファーマ)」認証を2023年4月に取得予定。これまでに新型コロナワクチンも運んでおり、専用倉庫とGDP基準への合致、CEIVファーマ認証取得で高付加価値貨物である医薬品の取り扱い拡大につなげる。

*写真は11枚。

成田空港に開業する医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」は充電式定温コンテナを充電可能=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

医薬品を積んだコンテナを開けるJALのスタッフ=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」でコンテナから医薬品を運ぶ電動フォークリフト=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」でコンテナから医薬品を運ぶ電動フォークリフト=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」で医薬品を運ぶ電動フォークリフト=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港に開業するJALの医薬専用定温庫「JAL MEDI PORT」に展示された貨物コンテナ=22年9月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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日本航空 [1]

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