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バンコクまでネット無料 ZIPAIR搭乗記・サーチャージなしで経費削減(後編)

 水際対策の緩和後、新たな課題となる燃油サーチャージの高騰。ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)の搭乗記後編は、機内の様子を取り上げる。

国内線並みの片道3万円でバンコクのスワンナプーム空港に到着=22年9月9日現地時間21時41分(日本時間23時41分) PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
前編 [1]
サーチャージなし片道3万円
国内線787と同じシートピッチ

後編
電源あり。ネット無料
LCCイメージと異なるZIPAIR

電源あり。ネット無料

 個人用モニターがない分、テーブルとタブレットホルダー、電源コンセント、充電用USB端子が全席に設けられている。コンセントとUSB端子は一体型で、最前列は自席、その他の席は前席左下に設置した。タブレットホルダーはiPadなどのタブレットだけでなく、スマートフォンをセットすることもできる。バンコク行きの機内でも、タブレットホルダーを使って動画を見ている人が何人もいた。

ZIPAIRのエコノミークラス「Standard」のシートにはタブレットやスマートフォンを置けるスタンドがある=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRのエコノミークラス「Standard」のシートにはタブレットやスマートフォンを置けるスタンドがある=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全席に電源コンセントと充電用USB端子を備えるZIPAIRのエコノミークラス「Standard」=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 私が買った航空券には、機内食などが付いていない。一方、座席指定や受託手荷物などとセットで機内食が付く運賃もある。ZIPAIRによると、機内食を食べる人は全体平均で1便あたり乗客の3-4割だという。私は今回「バターチキンカレー」(1200円)を事前注文、コカ・コーラ(300円)、ケアリングアイスのココア味(500円)を機内販売で頼んだ。

 カレーにはミネラルウォーターが1本付いてきた。JALなどフルサービス航空会社のような付け合わせやデザートは付いていないが、私はどちらかというと栄養のバランスを無視してメインメニューだけ食べたいので、このほうが良かった。おしぼりも付いてくるが紙ナプキンはなかったので、必要な人はあらかじめ用意しておいたほうが良いだろう。

 アレルギーなどに配慮したケアリングアイスは、乳や卵などの動物性原料や小麦を使用せず、ココナッツミルクやおからパウダー、豆乳で代用。白砂糖の代わりに米麹由来の甘酒を使用し、自然な甘みを生かしたアイスに仕上げたそうで、何も言われないと普通のアイスと変わらない味だった。

機内食を乗客に手渡すZIPAIRの客室乗務員=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの「バターチキンカレー」=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ケアリングアイスのココア味とコカ・コーラ=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 客室乗務員たちは、各自に支給されたiPadで、機内食や機内販売品の注文状況を確認していた。機内食も予約した乗客が搭乗しなかった場合などは、ある程度時間がたつと機内販売品に追加され、スマートフォンなどで注文できる。決済も乗客が注文時に済ますので、客室乗務員も機内食の準備などを効率良く作業できる。

バンコクへ向かうZIPAIRのZG51便=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 食事を済ませてからは、日本時間9日午後8時すぎから原稿を書いたり、普段通り作業した。国内線の787と同じシートピッチなので、特に不便はない。電源コンセントもあるのでバッテリーの減りを気にすることもない。

 インターネット接続が無料であるのも便利だ。国際線は飛行する場所により通信が不安定になることがあるので、フルサービス航空会社では時間無制限プランにすることが多い。日本円で2000円から2500円程度はかかるので、運賃が安いことに加えて出張にも便利だと感じた。

 現地時間9日午後9時7分(日本時間同日午後11時7分)、バンコクのスワンナプーム国際空港に着陸し、10分後の同17分にスポット(駐機場)へ到着。成田から約6時間で着いた。

 到着後はワクチン接種の確認はあるが、PCR検査を受ける必要も、隔離もなく市内へ向かうことができた。

バンコクのスワンナプーム空港に着陸するZIPAIRの成田発ZG51便=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

バンコクのスワンナプーム空港=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

到着客のワクチン接種証明書などを確認するバンコクのスワンナプーム空港の窓口=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

LCCイメージと異なるZIPAIR

 LCCというと、座席が狭い、到着が遅れる、といったイメージを持つ人が多いのではないか。一度に多くの乗客を運び、便間を詰めて機材をフル稼働させるのがLCCのビジネスモデルなので、こうした課題があるのだが、ZIPAIRのような中長距離LCCは事情が少し違う。

ZIPAIRの成田発バンコク行きZG51便の機内=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRのエコノミークラス「Standard」=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 確かにJALの787の国際線仕様機と比べると座席数は1.5倍と大幅に増えたが、シートピッチは国内線仕様の787と同じなので窮屈ではなかった。到着も約30分の早着となり、問題なかった。国際線の運航スケジュールは、国内線よりも余裕を持たせているからだ。

ZIPAIRのビジネスクラスにあたる上級クラス「ZIP Full-Flat」=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、今後はインバウンド(訪日客)が急速に戻ってくる可能性があり、日本人も海外に行くようになると機内は混雑するだろう。今回は搭乗率が約50%で、窓側から3席を1人で独占できたが、そう遠くないうちにこうした乗り方はできなくなる。エコノミークラスを余裕ある状態では利用できなくなるが、運賃は国内線並みだ。混雑した機内に抵抗があるならば、他社のビジネスクラスにあたる「ZIP Full-Flat」という選択肢もある(関連記事 [2])。

 最後に経費精算の観点では、法人名義の領収書をオンラインでは発行できないのは改善した方が良いと感じた。現在はコンタクトセンターに依頼すると郵送してくれるそうだが、フルサービス航空会社のようにオンラインで発行できる方が、ZIPAIRにとっても省力化になるのではないか。いずれにせよ、片道3万円台という国内線並みの運賃でバンコクまで行けるメリットは、観光・出張問わず有効活用したほうが良さそうだ。

関連リンク
ZIPAIR [3]

ZIPAIR搭乗記・サーチャージなしで経費削減
前編 片道3万円でバンコクへ [1]
番外編 フルフラットシートで片道10万円 [2]

機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル [4]
ZIPAIR 787-8 JA822J機内公開 フルフラットシートも [5]

写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適 [6]
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席 [7]
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ [8]