- Aviation Wire - https://www.aviationwire.jp -

ANA、高松市で都会の仕事と農業両立「アグリ・スマートシティ」10月から実証実験

 全日本空輸(ANA/NH)を中核とするANAグループは9月16日、 NTTコミュニケーションズと羽田みらい開発の2社と連携し、「アグリ・スマートシティ」の実現を目指した実証実験を、香川県高松市で始めると発表した。都会の仕事をリモートワーク(テレワーク)で続けながら地方に滞在し、農業などと両立させることで交流人口を広げ、地方の課題解決につなげる取り組みで、モニター参加者を17日から募集する。

「アグリ・スマートシティ」の実証実験を実施する高松市特産の三豊なすとアスパラガスを手にするANAの客室乗務員=22年9月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
転職せず地方移住
地方からイノベーションを

転職せず地方移住

 アグリ・スマートシティは、飛行機とICT(情報通信技術)で地方都市と都会を結び、リモートワークを活用することで、現在は首都圏などに居住している人が転職せずに地方へ移住し、勤務先の仕事を続けながら居住地域の農業などを両立できるようにする。

「アグリ・スマートシティ」の実証実験について説明するANA総合研究所の森孝司・主席研究員=22年9月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAグループの調査研究機関、ANA総合研究所の森孝司・主席研究員は、解決したい課題として、1)大都市圏への人口一極集中、2)地域の過疎化、3)日本の農業など一次産業の衰退、4)イノベーションが生まれにくい環境、5)国民の幸福度低下の5点を挙げた。「リモートワークが出来る人なら都市部に住む必要なく地方に住むことができ、都会の仕事と農業などを両立できる。遠くの知を結びつけるとイノベーションにつながる」(森氏)と説明した。

 実証実験の第1弾となる高松市は香川県の県庁所在地で、人口41万人。市街地から海や山、島を望め、穏やかな気候で自然災害が少ない。また、市街地などに「コワーキングスペース」があり、リモートワーク環境が整っているという。

 一方で、農家は高齢化が著しく、今の耕作面積を維持するのが難しくなってきており、新しく就農する人はいるものの、厳しい状況が続いているという。実証実験に名乗りを上げることで、都心部との交流人口拡大を図る。

 実証実験のモニターは、第1弾として9月17日から10月14日まで最大20人募集。期間は10月15日から12月18日まで。市の北西部に位置し、山と瀬戸内海に囲まれた「下笠居(しもかさい)」地区を検討し、それ以外の地域を希望する場合は相談に応じるという。滞在地域では、農業などを手伝う。

地方からイノベーションを

 森氏によると、全国の約15自治体から参加表明があり、一番早く準備が整った高松から始めるという。「年内には第2弾として4-5自治体が参加を表明してくれるのではないか」(森氏)とし、残る自治体は年明け以降になる見通し。実証実験の期間は2年間を予定しており、その後の事業化につなげていく。

 森氏は「シリコンバレーも都心ではなく地方にある。地方には課題がたくさんあるが、だからこそイノベーションが起きる」と話し、大都市圏で働く人が地方へ流入することで、新しいサービスなどが生まれる可能性に期待を寄せた。

 羽田-高松間の空路は、9月時点でANAが1日6往復、日本航空(JAL/JL、9201)が同7往復の計1日13往復で、片道の飛行時間は約1時間20分。ANAの高松発着便は羽田線のほか、那覇線も1日1往復運航している。

ANAグループとの「アグリ・スマートシティ」実証実験を発表する高松市の大西秀人市長(中央画面)ら=22年9月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
「アグリ・スマートシティ」をめざした実証実験モニター参加者募集 [1](ANA総合研究所)
全日本空輸 [2]
NTTコミュニケーションズ [3]
HANEDA INNOVATION CITY [4]
高松市 [5]
高松空港 [6]

ANA、都会の仕事と農業両立の実証実験 NTTコムと共同、羽田イノベーションシティで [7](22年3月10日)