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A321LRとXLR、航続距離差はタンクにあった 特集・世界最長距離飛べる単通路機の秘密

 豪州のジェットスター航空(JST/JQ)が新機材エアバスA321LRの初受領を前に、独ハンブルクにある最終組立工場で報道関係者向け説明会をエアバスと開いた。A321LRは航続距離の長さが売りで、グループではジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が一足早くA321LRの受領を開始しており、7月1日に就航させる。ジェットスター航空の受領開始は、1カ月後の8月となる見通しだ。

 2024年からはジェットスター航空は航続距離がさらに長くなったA321XLRの受領を始める予定だが、A321LRとA321XLRは航続距離以外にどのような差があるのだろうか。エアバスの担当者に違いを聞いた。

エアバス単通路型マーケット・ディベロップメント・ディレクターのヴィクター・コウイチ・シゲオカ氏。A321LRとXLRはどこに違いがあるのか=22年6月23日 PHOTO: Takayuki MURATA/Aviation Wire

—記事の概要—
追加タンクに違い
東海岸からローマまで

追加タンクに違い

 A321LRのベースとなるA321neoの航続距離は3500海里(約6482キロ)。2015年1月にエアバスが開発発表した航続距離延長型のA321LRは、これを最大4000海里(約7408キロ)まで延ばした。さらに、2019年6月には航続距離を1300キロ近く延ばし、単通路機では世界最長の4700海里(約8704キロ)まで達したA321XLRの開発を発表。XLR(Xtra Long Range)は「超長距離」を意味するもので今月15日に初飛行し、2024年の就航を目指している。

初飛行するエアバスA321XLR=22年6月15日 PHOTO: Sylvain Ramadier/Airbus

 では、LRとXLRは何が違うのだろうか。LRは、3つの「ACT(Additional Center Tank:追加センタータンク)」を備える。床下スペースに設置するACTはコンテナ状で着脱可能になっており、航空会社の運航状況に合せて柔軟な運用が可能になっている。

 これに対し、XLRは機体構造と一体化した追加タンク「RCT(Rear Center Tank:リアセンタータンク)」が特徴。機体とタンクを一体化することで、燃料搭載スペースの効率化と軽量化を図った。また、XLRにはオプションとして「フォワード(前方)ACT」が用意されている。

 最大離陸重量(MTOW)はLRの97トンに対し、XLRは101トンに増加している。エンジンは両機種ともハードウェアは共通でCFMインターナショナル社製LEAP-1Aだが、FADEC(Full Authority Digital Engine Control:全デジタル式エンジン制御装置)の設定変更により、XLRは推力が向上した。また、XLRは最大離陸重量の増加に伴い、着陸装置を強化している。

 XLRのメーカー標準座席数は2クラス180-220席、1クラスの場合は最大244席設定できる。1座席当たりの燃費は、旧世代機と比べて30%改善されるとしている。

 操縦資格は共通化されており、エアバスでは追加トレーニングは不要としているが、航空会社によっては数時間程度の講習を行うという。

東海岸からローマまで

 エアバス単通路型マーケット・ディベロップメント・ディレクターであるヴィクター・コウイチ・シゲオカ氏は「A321XLRは長距離路線のルートオープナー(路線開拓者)となる存在だ。LRは米東海岸から欧州へのルートを開拓したが、XLRではより遠く、ローマまで飛ぶことができる」と説明する。

ハンブルクの最終組立工場で公開されたジェットスター航空のA321LR初号機=22年6月23日 PHOTO: Takayuki MURATA/Aviation Wire

ハンブルクの最終組立工場で公開されたジェットスター航空のA321LR初号機=22年6月23日 PHOTO: Takayuki MURATA/Aviation Wire

 XLRは20以上の顧客から500機を超える受注を獲得。機体の最終組立は、現時点ではハンブルク工場でのみ行われている。

 ジェットスター航空は、18機発注したA321LRのうち、8機が2023年5月までに引き渡され、2024年半ばまでにすべて揃う見通し。2024年半ばから引き渡しが始まるA321XLRは、2029年までに20機を受領する計画となっている。

 航空会社が追加燃料タンクを外すことも可能なLRに対し、単通路機として世界最長の航続距離にこだわり抜いた構造の追加タンクを持つXLR。ジェットスター航空は、どのように2機種を使い分けていくのだろうか。

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