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軽戦闘機型も視野 特集・次世代練習機T-7A「レッドホーク」の現在地

 F-22やF-35など第5世代戦闘機や将来開発される戦闘機などのパイロット育成を主眼に置いてボーイングが新規開発したジェット複座型練習機T-7A「レッドホーク」。量産初号機が現地時間4月28日にセントルイスでお披露目された。今後は地上試験と飛行試験が行われた後、米空軍に引き渡される。2018年9月27日に米空軍がボーイングと締結した契約では、T-7Aを351機を調達するほか、シミュレーターなど46基の地上訓練設備を導入する。

ボーイングが公開したT-7Aの米空軍向け初号機(同社提供)

 5月に来日したボーイングの防衛・宇宙・セキュリティ部門グローバルセールス&マーケティングのジョン・スーディング氏は「T-7Aは単なる飛行機ではなく、訓練システム全体だ」と、機体と地上の訓練設備が密接に連携したシステムであることを強調する。

 当面の計画やライセンス生産の可能性、発展型の計画など、ボーイングはどのように考えているのだろうか。

—記事の概要—
整備性重視の新設計
訓練に合わせて計器表示変更
軽戦闘機も検討

整備性重視の新設計

 T-7Aは、T-Xとして開発が進められてきた単発練習機で、1959年に初飛行したノースロップ・グラマン(当時ノースロップ)T-38「タロン」の後継機。第5世代戦闘機や爆撃機のパイロットを養成するジェット練習機で、飛行試験機は2機製造された。スーディング氏は「今年は量産機を5機納入し、地上訓練設備は7基を引き渡す」という。

整備性を重視したT-7Aの飛行試験機(ボーイング提供)

 2023年までに米空軍へ初号機が納入され、2024年までに初期運用能力、2034年までに完全な運用能力をそれぞれ獲得できる見込み。

 T-7Aのエンジンは、F/A-18「ホーネット」と同じアフターバーナー付きのF404-GEで、単発ながら双発のT-38Cと比べて推力が約3倍となり、近年の戦闘機と同じ垂直尾翼が2枚の「ツインテール」を採用して全高を抑えた。コックピットは教官が座る後席を前席よりやや高い位置に配した「スタジアムシーティング」とすることで視界を確保し、訓練生を指導しやすくしている。また、編隊飛行もしやすいという。

T-7Aの飛行試験機(ボーイング提供)

 地上とのデータリンクやキャノピーを横開きにするなど、T-38を使う教官の声を開発に反映し、製造コストを抑えるとともに整備性も高めた。「キャノピーを横開きにすることで、射出座席を交換したり整備しやすくした。主翼を高い位置に配することで整備時にアクセスパネルを開けやすくし、アビオニクスのスペースもシンプルなプラットフォーム・ダウン・ドアにより、すべてのアビオニクスのボックスにアクセスできる」(スーディング氏)と整備性の高さをアピールした。

 「オイルなど液体の管理もしやすく、APU(補助動力装置)を搭載することで、だいたい30分以内に次の飛行に向けた準備ができる。直近の飛行試験では、1日6回飛行できた」と、訓練を円滑に進められるという。また、機体のライフサイクルは8000飛行時間を計画しており、「実運用でデータを集めて延ばしていく」(同)という。

訓練に合わせて計器表示変更

 T-7Aの愛称「レッドホーク」は、空軍の前身となる陸軍航空軍最初のアフリカ系米国人による第99戦闘飛行隊に由来。同隊が運用していた戦闘機カーティスP-40ウォーホークへのオマージュとして、量産機では垂直尾翼を赤く塗装したデザインを取り入れた。

T-7Aの地上訓練設備(ボーイング提供)

 スタジアムシートを採用したコックピットは、戦闘機と同様の操縦特性や全天候型の性能を実現し、さまざまな訓練生に対応できるようにした。女性の5%から95%の男性まで、あらゆる体格の人が操縦できるという。また、タッチスクリーン式の大型ディスプレイは