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事故原因をヒューマンファクターから探る 特集・アシアナ機事故とヒューマンファクター(最終回)

 人は必ずミスを犯す。パイロットとて例外ではない。それを認め、対策を具体的かつ技術的に規定した訓練がCRM(Crew Resource Management:クルー・リソース・マネジメント)であることは前回 [1]述べた。アシアナ機(ボーイング777-200ER型機、登録番号HL7742)の事故は、その時コックピットにいた3人のパイロット間でCRMが機能していなかった、あるいはCRMそのものに対する認識が低かったことに原因がありそうだ。

サンフランシスコ空港で大破したアシアナ航空の777(NTSB提供)

 このアシアナ機事故は、今後ヒューマンファクターの教科書に載るくらい、こう言っては不謹慎かもしれないが「典型的かつ示唆に満ちた」事例になると想像される。

 乗務員全員が生還しており、米国家運輸安全委員会(NTSB)による事故に至る人的要因、つまりヒューマンファクターについての有意な調査結果を期待したい。

 最終回では、このヒューマンファクターの観点から事故原因を探る。そして、航空会社に求められ、またその構築に努力している「安全文化(Safety Culture)」についても紹介しよう。

スイスチーズ・モデル

 前回 [1]、事故に至る事象のチェーン(連鎖)について解説したが、この考え方をより多角的かつ汎用的に扱える概念図がある。英心理学者James Reason(ジェームズ・リーズン)氏が提唱したスイスチーズ・モデルである(図1)。