- Aviation Wire - https://www.aviationwire.jp -

空自のYS-11FC、まもなくラストフライト 最後のダートエンジン機52-1151

 航空自衛隊が運用する日本航空機製造(日航製)YS-11型機のうち、オリジナルの英ロールス・ロイス製ターボプロップエンジン、ダートMk542-10を搭載する最後の機体となった飛行点検機YS-11FCの51号機(機体番号52-1151)が3月で退役する。

 すでに民間や他の官庁の機体は退役しており、「ダートサウンド」として親しまれたオリジナルエンジン最後の機体は、17日がラストフライトになる見通しだ。

入間基地を離陸するYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
人員輸送機から改修
南鳥島まで飛べるU-680A
運用続くスーパーYS

人員輸送機から改修

 空自の飛行点検隊は入間基地に拠点を置き、陸海空3自衛隊の42基地にある163の航空保安施設が正常で、必要な機能を有しているかを調べる「飛行点検」を受け持つ。現在はYS-11FCのほかU-125、YSの後継となるU-680Aの3機種を運用しており、飛行点検回数は年間約300回にのぼる。3機あったYS-11FCは、51号機を除きすでに退役している。

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 YS-11FCは1971年6月に、最初の機体となる60号機(12-1160)が配備された。その後、1991年4月に2機目の54号機(62-1154)、1992年3月に今回退役する3機目の51号機が配備され、3機体制で任務にあたっていた。3機のうち、当初から飛行点検機として新造されたのは60号機のみ。51号機と54号機は、人員輸送機YS-11Pから改修された機体となる。また、51号機は要人(VIP)輸送仕様で製造され、空自のYS-11ではもっとも古く、同じくVIP仕様の52号機は、あいち航空ミュージアムに展示されている。

 カナダ製自動飛行点検装置「AFIS-1」(160号機のみドイツ製「AFIS-300」)や、自動飛行点検時に自機の位置を補正するためのカメラなどを搭載。51号機は1965年3月25日に引き渡された機体で、同月から1992年3月までは木更津航空隊に所属し、自動飛行点検装置を1992年3月に搭載。飛行点検機としての運用が同月からスタートした。

YS-11FCの自動飛行点検装置「AFIS-1」=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCの機内=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 搭乗員は飛行点検操縦士(機長)と副操縦士、機上整備員が1人ずつ、機上無線員(パネルオペレーター)が2人の計5人が基本。飛行点検操縦士やパネルオペレーターは、飛行点検隊で要員養成を行っており、YS-11FC後方には旅客機のように通路を挟んで左右2席ずつ計4席の座席がある。機体最後尾にはギャレー(厨房設備)とラバトリー(化粧室)があるが、51号機のラバトリーは故障しているため簡易トイレを持ち込むという。

 51号機の特徴のひとつとして、ドアが前開き式になっている。空自のYS-11は53号機以降がスライド式になったため、3機あるYS-11FCで唯一の前開き式だった。主翼と垂直尾翼の防除氷装置も、51号機から54号機まではヒーターで熱した空気を翼前縁部に流す「コンバッション式」だったが、55号機以降は空気圧で黒いゴム部分を膨張させる「ラダー・ブーツ式」に変わった。

YS-11FCで唯一の前開き式ドアの51号機=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

南鳥島まで飛べるU-680A

 後継機のU-680Aは、米セスナのビジネスジェット「サイテーション・ラティチュード」をベースとした機体で、YS-11FCと同数の3機を2020年3月から今年1月にかけて受領済み。

YS-11FCの後継機U-680A=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 航続距離はYS-11FCの約1240海里(約2300キロ)に対し約2700海里(約5000キロ)と約1.8倍に伸び、上昇高度もYS-11FCの2万フィート(約6000メートル)に対して4万5000フィート(約1万4800メートル)と2倍以上になり、最大速度もYS-11FCの約245ノット(約454キロ)からマッハ約0.8(約953キロ)と大幅に向上した。

 U-680Aは航続距離が長く、短距離で離着陸ができるため、南鳥島まで飛べる数少ない航空機。また、航続距離と速度が向上したことで、YS-11FCでは泊まりで対応していた飛行点検も、日帰りでできるようになったという。

運用続くスーパーYS

 YS-11は、半民半官の日本航空機製造が1962年から1974年までに試作機2機を含む182機を製造した戦後初の国産旅客機。日航製が設計・開発と生産管理、品質管理、販売、プロダクトサポートを行い、生産は重工各社など機体メーカーが分担し、最終組立を三菱重工業(7011)が担当した。

YS-11FC(右)と後継機のU-680A=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本国内では、民間の航空会社や国土交通省航空局(JCAB)、海上保安庁、海上自衛隊で使われてきた機体は、すべて退役済み。最後に残ったのが空自機で、このうちダートエンジンを積む最後の機体が、51号機となった。

 このほかに、海自が運用していた対潜哨戒機P-2JのエンジンIHI製T64-IHI-10Jに換装し、プロペラのブレードがオリジナルの4枚から3枚になった「スーパーYS」とも呼ばれる電子戦訓練機YS-11EAと電波情報収集機YS-11EBは、当面運用が続く。しかし、YS-11EBの後継機となるRC-2が2020年10月に入間基地へ配備されたことから、空自のYS-11も全廃が徐々に近づいている。

*ラストフライトの記事はこちら [1]
*4K動画はこちら [2]
*写真は33枚。



【4K】空自の飛行点検機YS-11FC 最後のダートエンジンまもなく退役 52-1151


YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCのコックピット=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCのエンジン、ダートMk542-1=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCのエンジン、ダートMk542-1=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCの機上整備員が使う整備マニュアル=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCの機内=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCの機内=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FCの前に整列する飛行点検隊員ら=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

右エンジンをスタートさせるYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地を出発するYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地を離陸するYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地を離陸したYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地に着陸するYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地の駐機場へ向かうYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地の駐機場へ進入するYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地の駐機場へ進入するYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地に到着したYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地に到着したYS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地でYS-11FCを点検する隊員=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

入間基地でYS-11FCを点検する隊員=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

YS-11FC=21年3月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
航空自衛隊 [3]
入間基地 [4]
飛行点検隊 [5]
YS-11FC [6]

4K動画(YouTube Aviation Wireチャンネル [7]
【4K】空自の飛行点検機YS-11FC 最後のダートエンジンまもなく退役 52-1151 [2]

YS-11
幻の3発機YS-33やジェット版YS-11Jも あいち航空ミュージアム「日本の翼 YS-11展」開幕 [8](20年1月11日)
YS-11最後のVIP輸送機 写真特集・あいち航空ミュージアム空自52-1152 [9](17年12月4日)
「フレンドシップで運ぶと思っていた」ANA整備士から見たYS-11聖火輸送 [10](18年8月16日)
「名古屋からは乱気流で大変でした」ANA客室乗務員から見たYS-11聖火輸送 [11](18年8月14日)
所沢のYS-11、機内公開 全日空OBや自衛隊員がボランティア [12](16年4月18日)
「MRJも粘り強く取り組んで」 元日航製の矢嶋さん、YS-11初飛行50周年を祝う会でエール [13](12年10月9日)

【お知らせ】
自動点検装置について空自からの提供情報が更新されたため記事に反映しました。(21年4月6日 19:57 JST)