ANA、福岡・能古島でドローン配送　注文から30分、セブンイレブンやアイン薬局と実証実験

　全日本空輸（ANA/NH）を傘下に持つANAホールディングス（ANAHD、9202）は12月3日、コンビニ大手のセブン-イレブン・ジャパンや調剤薬局を展開するアインホールディングス（9627）、福岡市とともに、ドローンで日用品や医薬品を注文後すぐに配送するサービスの実証実験を、福岡市の能古島（のこのしま）で報道関係者に公開した。ANAHDは2018年から福岡市内で実証実験を行っているが、今回は5キロまで食料品などを積める従来より大型のドローンを初投入した。また、ANAHDがコンビニと共同でドローンの実証実験を実施するのも初となった。

　博多湾に浮かぶ能古島は、博多駅から向かうと路線バスで約40分ほどの姪浜旅客待合所からフェリーに乗り、10分ほどで着く。約200世帯約720人が暮しているが、昨年さまざまな日用品を扱う商店が閉店し、島民は1時間に1便のフェリーで対岸に渡って買い物をすることになり、買い物に出るだけで2時間はかかる状況だ。

　今回の実証実験は12月2日から5日まで実施。島民が日用品などを注文すると、対岸のJR姪浜駅周辺のセブンイレブンの店舗、福岡小戸4丁目店から博多湾沿いの福岡市ヨットハーバーまで電気自動車で陸送し、ANAHDの社員がドローンに積み込んで能古島まで2.3キロを4分程度で飛行している。注文から能古島に品物が届くまでは約30分で、初日の2日は12往復24便を運航した。

　商品の注文は、セブンイレブンが東京と北海道、広島の一部地域で実証実験している「ネットコンビニ」のシステムを利用。同社が能古公民館に受け取り用ロッカーを設置して島民が受け取れるようにした。

　3日は能古の自治会長を務める福田唯夫（ただお）さんと公民館の田中郁子さんが、サンドイッチやカフェラテ、プリン、食パンなどを注文。午後0時43分に注文が確定すると、品物を積んだドローンは午後1時2分に能古公民館のグランドに着陸した。「フェリーは1時間に1本しかないので便利。短時間で来る」、田中さんは「買い物に行っても、うっかり買い忘れする時があるので便利」と話していた。

　また、アイン薬局生の松原店（西区生の松原3丁目）で出された福田さんの処方箋医薬品も、別便のドローンで運ばれた。能古島に医薬品が到着した際はANAHDの社員がロッカーに運び、福田さんがQRコードなどで本人確認後、ロッカーから取り出していた。

　今回の実証実験では、自律制御システム研究所（ACSL）の国産ドローン2機種を運航。積荷を1.7キロまで積めるPF2と、5.0キロまで積めるGT500が使用された。3日午前中のフライトで福田さんの薬を運ぶ際はPF2、セブンイレブンへ注文した食料品を運ぶ時にはGT500を使った。積荷の重さは、薬が425グラム、食料品が2.95キロだった。

　ANAHDで次世代事業を模索する「デジタル・デザイン・ラボ」で、ドローン事業化プロジェクトリーダーを務める保理江裕己さんは、「日用品の重さは2-3キロが中央値だったので、5キロくらい運べる機体が必要」と話し、コンビニ配送の実用化にはGT500クラスのドローンが現実的だといい、積荷の種類で使い分けていく。

　ANAHDは2016年12月にドローンプロジェクトを立ち上げ、2018年から福岡市内の玄界島でドローンによる配送実験を実施。同市でのドローン実証実験は今回で4回目となった。これまでに実証実験で機体を喪失したことはなく、2022年の「レベル4」と呼ばれる人がいる場所で運航者が目視せずにドローンの飛行が認められるタイミングで、事業化を目指す。

　セブンイレブンのネットコンビニは配送料が330円。今回の能古島での実証実験は配送料が無料だが、ドローン配送を実用化した際、どの程度上乗せするかや自治体の補助が出るかなどが、離島などでの普及の焦点になりそうだ。

＊写真は21枚。

セブンイレブンに注文