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インバウンド獲得見据え国内線拡充前倒し 特集・ピーチ新CEO森氏に聞く

 2012年3月に就航した国内初のLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)。新型コロナウイルスによる打撃を受けたが、都道府県をまたぐ移動の自粛が全国で緩和された6月19日から国内全路線の運航を再開し、7月22日からは全路線ですべての便の運航を再開して、計画通り便数を1日あたり約100便に戻す。8月は増便により計画を552便(16.8%)上回る月間3822便を運航し、国内旅行や帰省需要などに対応するが、国際線は入国規制などの関係もあり、再開の見通しが立っていない。

インタビューに応じるピーチの森CEO=20年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 こうした危機的状況の中、ピーチは就航前から会社を率いてきた井上慎一氏がCEO(最高経営責任者)を退き、創業メンバーで副社長の森健明氏が4月1日にCEOに就任した。これまでも台風被害などが生じた際、陣頭指揮にあたってきた森氏だが、ほとんどの便が運休する事態に対応するのは初めてだ。旅行に対する考え方も一変した中、危機管理だけでなく路線計画の見直しに追われた。

 新型コロナの影響が長期化する中、国内LCCの老舗をどうかじ取りしていくのか。森CEOに聞いた。

—記事の概要—
自ら判断する重み
国内線拡充を前倒し
A321LRは国内幹線も
「素うどんのピーチ」でがんばる

自ら判断する重み

── CEOという立場になり、会社の見え方は変わったか。

森CEO:CEOは重みが違う。今までは井上さん(前CEO、現ANA専務)がいるという安心感があった。気持ちでは180度違う。4月1日に就任して、社長業の仕事が進むにつれて「自分で全部やらなければダメなんだな」と重みを感じている。

 過去ピーチは非常時を何度も経験しており、2018年9月に関空が冠水した時も、副社長の私が非常時の責任者として最前線でやっていたので、非常時には慣れているつもりだった。今も非常時で変わらないが、CEOとして自ら判断する重みが違う。

台風による運休から再開初便となったピーチの関空初新潟行きMM143便。森CEOは副社長時代こうした非常事態の陣頭指揮にあたってきた=18年9月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

── CEO就任を打診されたのはいつごろだったのか。

森CEO:2月の終わりぐらいだった。CEO就任の話ではなく、「これからこんなことを考えている」と井上さんと話していたときに、「そろそろバトンを渡さないと」という話が出た。その時は数年先にはそういうこともあるだろうという感じだった。3月に入り、ポジションはわからなかったが「ANAで仕事をしようと思う」と井上さんから言われ、ANAの役員体制がわかる数日前くらいだった。

 5年後くらいには世代交代があるだろうとは思っていたが、まさか4月に変わるとは思わなかった。当時は新型コロナウイルスの影響が出始めたころで、自分のことよりも会社をどうするかが頭にあった。

 3月ということもあり、中期計画をまとめたりと実務が忙しく、CEOになるとかならないとかはあまり考えずに実務に突入して今に至る状態だ。経営危機にどう対応するかが一番大事で、CEOとして何か新しいことはできていない。

 これまで関空のリカバリーや運航上のトラブルのリカバリーは、私の場合はアグレッシブに取り組むタイプ。井上さんは慎重にしっかり考えるタイプで、スピード感や大胆さはあると思う。私は行動を先にやってしまうので、社員は大変だと思う。

── 創業メンバーがCEOになる意義は。

森CEO:就航前のワクワク感やドキドキ感を知っている人は、今はもう限られている。創業メンバーがバトンを引き継ぐ意義はそこにあると思う。

 たまたま私はその中の一人だが、もう一回あの時のワクワク感、ドキドキ感を社員に体験してもらうために私がなったと思っている。

国内線拡充を前倒し

── 国内線が全路線再開になったが、国際線はどのようにしていくのか。

森CEO:国際線は入国制限と検疫の2点だ。14日間隔離がいつなくなるかなどが課題だ。ワクチンの接種が始まり、治療で緩和されれば今まで通り乗っていただけると思う。それがいつ始まるかだが、早くても来年の