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鏡のようなバックルと菊菱模様のソファ 写真特集・前政府専用機 貴賓室公開

 小松空港に隣接する石川県立航空プラザで一般公開が始まった、初代政府専用機「B-747-400」の貴賓室。2機あった前政専機のうち1セットで防衛省から無償貸与されており、同省からの貸与条件として展示物に来館者が触れないことや、品質を保つことなどを求められているため、貴賓室内に立ち入ることはできず、透明なパネル越しの見学となる。

石川県立航空プラザで公開が始まった前政府専用機の貴賓室のソファベッドのシートベルト=20年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 1993年に初の任務運航に就いたB-747は、民間機のボーイング747-400型機を改修した機体で、航空自衛隊千歳基地の特別航空輸送隊が運用。2019年3月末の退役までに100カ国269カ所を訪れ、天皇陛下や内閣総理大臣などを乗せる「任務運航」は349回にのぼり、地球365周分にあたる約1460万キロを飛んだ。

 退役後、貴賓室は前政専機の整備を手掛けていた日本航空(JAL/JL、9201)の格納庫がある羽田空港で機体から外され、貸与先が決まるまでは千歳基地に保管されていた。もう一つの貴賓室は、静岡県浜松市にある空自の広報施設「エアーパーク」に今後展示される。

石川県立航空プラザで公開が始まった前政府専用機の貴賓室=20年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

石川県立航空プラザで公開が始まった前政府専用機の貴賓室=20年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 貴賓室は、客室前方が2階建てになっているB-747の1階先頭部分にあり、コックピットの真下に位置する。左最前方の「L1ドア」よりも前に位置する個室で、退役まではセキュリティーの関係で一般公開されることはなく、場所も明かされることがなかった。広さはおよそ33平方メートル、高さは2.6メートル、幅は最大6メートルで、前方から左右にソファベッドが1つずつ、左側に1A席と執務机、衛星電話、右側に1H席と1K席、テーブル、2H席、2K席が設けられている。

 5つの席はクリーム色の革張り、ソファは「菊菱」と呼ばれる模様で、各席のシートベルトのバックルはくもりのない鏡のような状態を保たれてきた。前方のモニターは運航状況などを映し出せるもので、VHSビデオデッキやテープの収納スペースなどもみられた。

千歳基地の格納庫に駐機中の初代政府専用機B-747=19年3月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 展示を手掛けたテクノブレイン(京都市)のミュージアムプロデューサー、盛岡隆司さんによると、貴賓室内はカーペットと照明を除き実物で、LEDによる照明は実物の蛍光灯の色を再現したという。実物の貴賓室は天井や壁面パネル、オーバーヘッドビン(手荷物収納棚)などを機体構造物に取り付けているが、航空プラザに実機の胴体がないため舞台設営などに使う「トラス」を用いて曲線で構成される機首部分を再現した。取扱説明書などはなく、手探りで組み上げた。

 小松空港から徒歩8分ほどの立地にある航空プラザは、入館無料でYS-11のシミュレーター体験のみ有料。日本海側では唯一の航空をテーマとする博物館で、現在の開館時間は午前9時から午後4時まで(新型コロナウイルス感染防止のため通常より1時間前倒しで閉館)。休館日は年末年始(12月29日から1月3日)で、そのほかは年中無休となっている。

*写真は51枚(ソファベッド→1A席→1H-K席、2H-K席、前方収納棚、トラスの順)。

石川県立航空プラザで公開が始まった前政府専用機の貴賓室=20年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire