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ANAとJAXA、機内で宇宙日本食カレー 大西飛行士「本物のラーメン食べたい」

 全日本空輸(ANA/NH)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)は9月12日、成田-ヒューストン線で「宇宙フライト2018」を始めた。20日までで、日本人宇宙飛行士が宇宙空間で食べている「宇宙日本食」のビーフカレーなどを、機内食で提供する。

宇宙フライトとなった成田発ヒューストン行きNH174便の機内で提供する宇宙日本食のビーフカレー=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
カレーはスパイス強め
大西さん「日本食は自分へのご褒美」

カレーはスパイス強め

宇宙フライトの機内で提供する宇宙日本食のビーフカレー「スペースカレー」=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAは今年1月に、宇宙事業化プロジェクトを社内で立ち上げた。宇宙に関連した取り組みについて、パイロットや整備士、客室乗務員など部署をまたいで進めていくもので、今回の宇宙フライトがプロジェクト第1弾となる。現在17人のメンバーが携わっており、宇宙日本食の機内提供は初めてとなった。

 宇宙日本食は、JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する日本人宇宙飛行士のパフォーマンス維持・向上と、精神的なストレス低減を目的に認証しているもので、16社32品目を認証している。今回機内ではビーフカレーのほか、羊羹(ようかん)とキシリトールガム、緑茶の4品を提供。乗客に宇宙を身近に感じてもらう。

 ビーフカレーはハウス食品(2810)が手掛けるもので、JAXAの認証は2007年6月に取得。宇宙空間では骨が弱くなるためカルシウムを強化し、無重力の宇宙船内では味覚が変化することから、スパイスが効いた濃い味に仕上げ、ウコンを同社通常品の2倍強に増量している。また、液体がISS内に飛び散らないよう粘り気を強くし、ドロッとしているという。

 山崎製パン(2212)が手掛ける羊羹は、長期保存が可能。緑茶は三井農林、ガムはロッテのものを提供する。

 宇宙フライトの対象路線は、NASA(米航空宇宙局)のジョンソン宇宙センターがあるテキサス州ヒューストンと日本を結ぶ成田-ヒューストン線。期間は「宇宙の日」の9月12日から「空の日」の20日までで、宇宙の日は1992年にJAXAの毛利衛宇宙飛行士(当時)が、日本人として初めてスペースシャトルに搭乗したことを記念して定められ、空の日は同じく1992年に民間航空再開40周年で制定された。

 機内では宇宙日本食の提供のほか、ANA出身の大西卓哉宇宙飛行士が出演するビデオ放映などを行う。ビーフカレーの提供は成田発NH174便のみで、エコノミーとプレミアムエコノミーでは、メインメニューの選択肢として用意。ファーストとビジネスでは、好みのタイミングで注文できる軽食のひとつとして提供する。その他の3品は、ヒューストン発NH173便でも用意する。

大西さん「日本食は自分へのご褒美」

 ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)で、新規事業開発を手掛けるデジタル・デザイン・ラボの津田佳明チーフディレクターは、「宇宙日本食を通じて、宇宙を知ってもらいたい。今回のフライトの機長は、宇宙事業化プロジェクトのメンバーだ」と説明。他路線での展開などは、「お客様からの意見を参考に考えていきたい」と述べた。

 ANAの元副操縦士で、ISS第48次/第49次長期滞在クルーを務めたJAXAの大西卓哉宇宙飛行士によると、ISSに持ち込む宇宙食は米国製で、健康のために塩分が控えめだという。そのうち15%程度の量は、各自が宇宙日本食など好みのものを「個人食」として持ち込めるため、「宇宙ではストレスがたまるので、がんばった時に自分へのご褒美として食べたり、他国の宇宙飛行士と物々交換した」(大西さん)と明かした。

 宇宙日本食のうち、大西さんの好物はビーフカレーとサバの味噌煮。「カレーはスパイスが効いているが、地上で食べるものとあまり違いは感じなかった」と話す。カレーはほかの宇宙飛行士にも人気で、物々交換で魚の缶詰などと交換したという。

 今後食べたいものを大西さんに尋ねると、「ラーメンが好きなので、宇宙でも食べたい。(ISS内で液体が飛散するのを防ぐため)今は麺にジェル状のスープを絡めたものなので、本物のラーメンが食べられる日が来てほしい」と笑った。

 NH174便の機材はボーイング777-300ER型機(4クラス264席)で、12日は188人(幼児1人含む)を乗せ、大西さんらに見送られて午前11時21分に成田を出発した。

*写真は16枚。

宇宙日本食について語るJAXAの大西宇宙飛行士(左)=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港で開かれた宇宙フライトの出発イベントであいさつするANAHDの津田チーフディレクター(右)=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港で開かれた宇宙フライトの出発イベントで記念撮影するJAXAの大西宇宙飛行士(中央)とNH174便の機長(左から2人目)、ANAHDの津田チーフディレクター(右から2人目)ら=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

宇宙フライトとなった成田発ヒューストン行きNH174便の機内で提供する宇宙日本食のビーフカレーなど=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

宇宙日本食=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港で開かれた宇宙フライトの出発イベントに展示された宇宙服=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港の搭乗口前で宇宙フライトとなったヒューストン行きNH174便の乗客にステッカーや搭乗証明書を配る大西宇宙飛行士=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港の搭乗口前で宇宙フライトとなったヒューストン行きNH174便の乗客と握手する大西宇宙飛行士=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港の搭乗口前で宇宙フライトとなったヒューストン行きNH174便の乗客と記念撮影する大西宇宙飛行士=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

宇宙フライトとなったヒューストン行きNH174便の乗客に配られたステッカー類=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を出発する宇宙フライトのヒューストン行きNH174便=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を出発する宇宙フライトのヒューストン行きNH174便を見送るJAXAの大西宇宙飛行士(右から3人目)とANAHDの津田チーフディレクター(同2人目)ら=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を出発する宇宙フライトのヒューストン行きNH174便を見送るJAXAの大西宇宙飛行士とANAHDの津田チーフディレクターら=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を出発する宇宙フライトのヒューストン行きNH174便を見送るJAXAの大西宇宙飛行士とANAHDの津田チーフディレクターら=18年9月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田-ヒューストン線の運航スケジュール
NH174 成田(11:15)→ヒューストン(09:30)
NH173 ヒューストン(11:30)→成田(翌日15:20)

関連リンク
全日本空輸 [1]
JAXA [2]

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