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「路線拡大はA321neo受領後」 セブパシフィック航空副社長インタビュー

 現在、フィリピンから日本に5路線を乗り入れるセブパシフィック航空(CEB/5J)。近ごろはアジア太平洋地域のLCC 8社とともに設立した航空連合「バリューアライアンス」でも話題となった。

 今後、日本を含めた路線展開や受領を予定しているエアバスA321neo、バリューアライアンスの展開など、来日した同社マーケティング担当のキャンディス・イオグ副社長に話を聞いた。

─ 記事の概要 ─
・「日本は非常に重要な市場」
・拡大する日本路線の利用客
・路線拡大はA321neo受領後に
・「フィリピン人は吉野家大好き」
・年末にサービスを開始する「バリューアライアンス」
「日本は非常に重要な市場」

── セブパシフィックにとって、日本はどのうような位置づけなのか。

「日本は重要な市場」と話すセブパシフィック航空のイオグ副社長=16年6月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

イオグ副社長:日本は非常に重要な市場。フィリピンを訪れる旅客数では、日本は米国と中国、韓国に続き4番目だが、将来的には3位以内に入るだろう。現在、2位から4位を北東アジアの国々が占めている。フィリピンはこれらの国にとって、最も近い南国リゾート。日本の利用客には「いちばん近い南国リゾート」として訴求していきたい。

── 日本路線の利用客は、観光とビジネスではどちらが多いのか。

イオグ副社長:日本からフィリピンへの利用客は、観光目的が多い。フィリピンからは観光のほか、ビジネス渡航も多い。このほか、フィリピンにいる家族が在日フィリピン人を頼って、観光目的で利用している。日本人と結婚し、日本国籍を取得している場合が多いので、家族渡航の割合は把握していない。

拡大する日本路線の利用客

── 日本路線の現状は。

イオグ副社長:2008年にマニラ-関西線で日本に就航し、2015年12月には福岡に乗り入れた。現在はマニラから成田に週7往復、関西に5往復、中部(セントレア)に4往復、福岡に3往復、セブ-成田線を週4往復運航している。

 日本路線の利用者数は、2014年は20万2000人、2015年は39%増の28万人だった。路線の拡大も考えているが、現在のエアバスA320型機(180席)よりも大きな機体(A330-300、436席)での運航も検討している。

── どの路線をA330-300で運航するのか。

イオグ副社長:2015年夏の繁忙期は、利用者が最も多いマニラ-成田線にA330-300を投入していた。将来的には、(A330-300の)投入頻度を上げて運用できるかどうかを判断したい。

 (日本路線全体では)2015年の提供座席数は、対前年比で30%増加した。利用客は39%増で、見込みよりも多くの人に利用してもらえた。

路線拡大はA321neo受領後に

── 現状、北海道や東北など、日本の北部に就航していない。乗り入れる予定は。

現在日本路線に投入しているA320。マニラから日本北部には飛ばすのが難しい=16年3月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

イオグ副社長:検討している。現在使用しているA320の飛行時間は4時間程度。(マニラから)北海道などには航続距離が足りない。現在の路線がA320での限界だ。

(A320の後継シリーズにあたる)A321neoを30機発注中で、初号機を2017年中ごろに受領する。受領後には日本の北部への運航も可能になるだろう。

── 日本以外への国際線展開は。

イオグ副社長:現在はシドニーや中東など、30都市に就航している。A321neoの受領により、「オプション」が増えることを期待している。現在はA320で可能なところにはすべて運航している。A321neo受領後は、日本北部のほか、インドなども候補地に挙がるだろう。

 フィリピンはアジアの中心地に位置し、地理的に「いい場所」にある。アジアのハブになり得る。

── フィリピンの国内線はどうか。

イオグ副社長:フィリピンは7100の島々からなる。移動はボートや大型の船などが主流。現在は国内34都市に乗り入れ、島と島とをATR72-500型機(76席)で結んでいる。

「フィリピン人は吉野家大好き」

── どのようなサービスを提供しているか。

イオグ副社長:LCCは「シンプルなサービス」が基本。無料の食事やビジネスクラスは用意していない。欲しい人に欲しいものを提供する。「ベストバリュー」を提供することが大切だと考えている。

 保有する57機の平均機齢は4.8年。これから導入する48機はすべて新造機を導入する。「質のいい機体」で提供するのもサービスの1つだ。

── 日本人は質の高いサービスを求める(関連記事 [1])。日本に特化したサービスは。

イオグ副社長:日本語の機内アナウンスを録音で放送している。このほか、日本路線以外でも吉野家の牛丼を食事メニューに加えている。吉野家はフィリピン人にとても人気がある。

 日本人利用客から好評なのは乗り継ぎ。成田からの利用客は、マニラ以遠のボラカイやパラワンなど、ビーチリゾートに向かうことが多い。日本人の動向を研究し、成田からビーチリゾートへの「通し料金」で販売している。通常のLCCは「ポイント・トゥ・ポイント」でしか販売していない。

年末にサービスを開始する「バリューアライアンス」

── 5月に設立した航空連合「バリューアライアンス」の今後の展開は。

イオグ副社長:バリューアライアンスはLCC 8社による初めての航空連合。アジア全体でサービスを展開していく。本国の航空会社が本国以外でも展開できるよう、相互にネットワークを拡大することが目的で立ち上げた。

 セブパシフィックに関して言うと、他国でフィリピン同様のサービスを展開できない。バニラエア(VNL/JW)は日本では強いが、フィリピンではそうでもない。今後は、札幌にいる利用客がセブに向かう場合、成田まではバニラエア、成田からセブまではセブパシフィックの航空券を1枚で発券できるようになる。

 セブパシフィックは国内外64都市に就航している。バリューアライアンスのサービス開始後は、160都市に拡大する。現地の利用客が使い慣れているウェブサイトから、160都市への航空券を購入できるようになる。

── バリューアライアンスは8社で設立した。今後、ほかの航空会社が加わる可能性は。

イオグ副社長:バリューアライアンスは当初、セブパシフィックとタイのノックエア(NOK/DD)、バニラエア、シンガポールのスクート(SCO/TZ)の4社で立ち上げ、現在は8社に拡大している。年末をめどにシステムを統合し、サービスを開始する。サービス開始後に状況を見つつ、新メンバーの補充を検討したい。

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