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コードシェアは「毒まんじゅう」か 特集・スカイマーク”官邸主導”再建(前編)

 「“上司”には逆らえない」。ある国交省幹部は、ことの成り行きをこう表現した。2014年11月、スカイマーク(SKY/BC)は日本航空(JAL/JL、9201)に対し、経営支援を要請。両社は旅客や貨物分野でのコードシェアについて、検討を進め始めた。

 ところが、JAL単独による支援に官邸が難色を示す。スカイマークの西久保愼一前社長は12月15日、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の幹部と面会。提携を打診する。

 “上司”の意を汲んだ国交省はこれを認め、スカイマークの支援は“官邸主導”とも言えるスタートを切った。その後、ANAが支援に着手し始めると、官邸サイドは鳴りを潜め、ANAは公正取引委員会と密に連絡を取り合っていく。

再生計画案が可決され握手を交わす(左から)スカイマークの井出会長、インテグラルの佐山代表、ANAホールディングスの長峯取締役、DBJコーポレート・メザニン・パートナーズの本野取締役=8月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 8月5日、ANAHDや日本政策投資銀行(DBJ)が参画するスカイマークの再生計画案(再生債務者案)が、東京地方裁判所で開かれた債権者集会で可決された。JALとの提携検討から9カ月。経営危機に陥った会社にとっては、長すぎる時間が過ぎていた。早ければ2月にも始まっていた大手とのコードシェア(共同運航)は、いまだ始まっていない。

 支援に乗り出すANAHDも、難しい舵取りを迫られる。債権者集会直後に開かれた記者会見で、グループ経営戦略室長の長峯豊之・取締役執行役員は、「運賃や路線、便数の決定プロセスに、ANAは関与しない」と、独立性を強調する。

 しかし、額面通り受け取る関係者は少ない。経営が悪化し、ANAの支援を受ける「新規航空会社」と呼ばれる中堅航空会社、エア・ドゥ(ADO/HD)やスカイネットアジア航空(ソラシド エア、SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の3社は、ANAとのコードシェア実施により、安定した収入を得られるようになった反面、ANAが減便する路線計画に呼応するように、新路線を開設している。

—記事の概要—
前編
9月に再生本格化
コードシェアは「毒まんじゅう」

後編
路線移管でANA機材や人員の国際線強化か
A380導入が決め手?

 ANAは今後、どういったコードシェアを進めていくのか。そして、賛同を取り付けたエアバスとの関係は、どうなっていくのだろうか。

9月に再生本格化

 「フタを開けるまで、ヒヤヒヤ、ドキドキしていた。心から安堵している」。長峯氏は再生計画案が可決された心境を、こう語った。

 スカイマークの大口債権者は4者。最大債権者である米国の航空機リース会社、イントレピッド・アビエーションは議決権ベースで37.91%、エアバスが29.40%、ロールス・ロイスが16.03%、米リース会社CITが13.38%だった。

 議決権を持つ193の債権者のうち、7月24日に期限を迎えた書面投票を含む174者が投票。135.5者がスカイマーク案に票を投じた。議決権額ベースでも60.25%に達し、再生案の成立に必要となる、投票した債権者数の過半数と議決権総額の2分の1以上という、2つの条件を同時に満たした。

 最大債権者であるイントレピッドが提出した再生計画案(債権者案)には、エアバスやロールス・ロイスなどと大口取引があるデルタ航空(DAL/DL)が参画。しかし、票を投じたのは37.5者、議決権額ベースで38.13%と、過半数には届かなかった。イントレピッドを除く大口債権者は、スカイマーク案に乗った。

 今後、再生計画の認可決定に対し、不服申し立てがなされなければ、約1カ月後の9月にはこの決定が確定。スカイマークの再生が本格化する。

コードシェアは「毒まんじゅう」

 長峯氏が独立性を強調する、スカイマークの路線計画。会見に出席したインテグラルの佐山展生代表は、「長峯さんから言っていただいているように、独立を維持することについては、長い時間を掛けてスポンサー契約や株主間契約で、きっちり合意していただいている」と説明する。

 では、再生計画の核となるコードシェアは、どうやって進めていくのか。まず、コードシェアを本格化させるには、ANAと