エアライン, 官公庁, 空港 — 2019年3月1日 09:05 JST

関空、航空機事故の訓練 飛行機に穴開ける新型消防車お披露目

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 関西空港を運営する関西エアポート(KAP)は2月28日、航空機事故を想定した消火救難訓練を実施した。毎年実施しているもので、KAPや航空会社、国土交通省航空局(JCAB)、消防、警察、自衛隊、海上保安庁、自治体など67機関の約800人、50台の緊急車両、ヘリコプターが参加した。

消火救難訓練用の機体に放水する関空の新型化学消防車=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 訓練はA滑走路(RWY06R)中央付近で、ABCD航空の国際線2018便が着陸後に強い衝撃を受け、右側にある第2エンジンから出火したと想定。機体に延焼し、負傷者が機内に多数発生しているとのシナリオで訓練が行われ、消火や避難誘導、負傷者の救助、関係機関の連携などを確認した。

 訓練用の機体は、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)がエアバスA320型機(登録記号JA804P)を提供。機体右側から発煙筒をたき、荷台にパイプイスを並べた大型トラック2台に乗客役が座り、避難や救助訓練を行った。救助された乗客は、医師らが治療や搬送の優先順位を決定するトリアージを行い、判定を受けた救助者は重症度に応じて救護所に運ばれた。

 関空は1994年9月4日に開港し、訓練は毎年実施しており22回目。24回のうち、2回は悪天候で実施できなかった。KAPの副最高運用責任者の升本忠宏執行役員は、「(昨年9月の)台風で情報連携が課題になった。クラウドで最新情報を共有できるようにしている」と、現場と対策本部での情報共有を重視した訓練だったと説明した。

 升本氏によると、台風の時にも同じシステムを使っていたが、各機関ごとに立ち上げる対策本部で異なる情報が流れないよう、運用を改善しているという。

消火救難訓練でお披露目された関空の新型化学消防車=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、今回の訓練では高位置対応伸展型放水銃「HRET(エイチレット)」を装備した新型の空港用化学消防車2台をお披露目。オーストリアのローゼンバウワー社製化学消防車が採用された。

 HRETを装備した新型化学消防車は、放水銃を運転室前方や高い位置、低い位置に伸展できる。高さを自在に変えられるだけではなく、機体を貫通させて消火する「穿孔(せんこう)ノズル」を使うことで、消防隊員を機内に突入させなくても、航空機で起きた火災の鎮圧が容易になる。放水銃の先端には熱画像カメラも備え、車内のモニターで確認しながら消火できる。

 関空に5台あるうち、4台を新型に更新する計画。2月に2台が納車され、12月に残る2台が引き渡される見通し。

*写真は29枚。

エンジン火災を想定し機体右側から発煙筒がたかれた訓練機となったピーチのA320=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

エンジン火災を想定し機体右側から発煙筒がたかれた訓練機となったピーチのA320=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

航空機を模して乗客役が救助を待つ大型トラック=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

消火救難訓練用の機体となったピーチのA320に放水する関空の新型化学消防車=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

消火救難訓練用の機体に放水する関空の新型化学消防車(手前)=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加する消防車などの緊急車両=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加する消防士=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練で消防士に救助される乗客役=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練で消防士に救助される乗客役=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練で機体に見立てた大型トラックから乗客役を救助する消防士=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練を視察する関西エアポートの山谷佳之社長(右)ら=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

救助した乗客役にトリアージを行う看護師ら=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

トリアージによる判定を受けた救助者を運ぶ消防士=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

救護所で救助者を手当てする消防隊員ら=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

救護所に救助者を運ぶ消防士=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

救護所に運ばれる救助者=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

救護所に救助者を運ぶ消火救難協力隊員=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空に集まった周辺自治体の救急車=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

救助者を救急車に運ぶ救急隊員=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加する海上保安庁のヘリ=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加するドクターヘリ=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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関空の消火救難訓練に参加するドクターヘリ=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加する海上保安庁のヘリ=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加するドクターヘリ=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

各機関の情報共有を重視した関空の消火救難訓練の対策本部=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

各機関の情報共有を重視した関空の消火救難訓練の対策本部=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空の消火救難訓練に参加した化学消防車をはじめとする緊急車両=19年2月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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